オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【咄嗟に出る言語が第一言語です】
オランダの都心にて、スーパーへのこだわりがすごいので毎週違う店舗に行っては心の中で評価する日々を送っている。
自転車で走っていた。
趣味であるスーパー評価(またの名を買い出し)の帰り道だった。
私は前をトロトロ走るお母さんの後ろを同じくトロトロ走っていた。
こういう時、私は抜かさない。
抜かした先で信号に捕まって、結果同じスタートラインに立つのが私の人生だからだ。
今まで大阪で、3256回は繰り返してきたのでもう繰り返したくない。
そのお母さんの自転車には、前輪に巨大な籠がついていた。
きっとお子さんが乗っているのだろう。
すれ違った先にある信号は青だった。
これはさすがに抜かしたほうがいいかもな、と思案しているとお母さんの前にもトロトロ走っている人がいた。
おばあちゃんだ。
どうやらこの、白髪のおばあちゃんがこのミニ渋滞の原因のようだ。
最終コーナーで先頭馬を刺したいであろうお母さんは、脇道にあった草むらに何かをぶん投げて、えいとおばあちゃんを抜かしていった。
ん?
流れるようにポイ捨てした!!
空き缶などの軽いものではなく、しかし手のひらサイズのそれは瞬く間に茂みに吸い込まれていった。
何かが不明だったが、茂みの”ボスッ”という音からして、重たいものだった。
お子さんを自転車に乗せながら、ポイ捨てした!
私は驚きのあまり、まあまあの声量で「え!?」と言ってしまった。
向かい風で良かった。声が風に乗っていかなかったからだ。
この「え!?」は、歩道を歩いていた黒いコートを着た大学生風のお兄ちゃんにも聞こえたらしく、視線がこちらに来たのを感じた。
あまりにも唐突かつ、あまりにも華麗なポイ捨てだったのでお兄ちゃんは、私同様に驚いたのだろう。
「今、見ましたよね!?きっとこの茂みに捨てようってハナから決めてて投げてましたよね!?」
私はお兄ちゃんに聞きたかったが、フットブレーキは急に止まれない。
私は、オランダの文化で一つ嫌いなところを挙げるとするならば、ここだなと感じた。
街全体を自分のゴミ箱だと思っている人がいる。
まさか、自転車からノールックで茂みにインするレベルにまで達しているとは思いもしなかった。