オランダワーキングホリデー情報局

オランダでのワーキングホリデー(2021-2022)の情報基地。毎年200人行っているはずなのに全員地球からログアウトしたのか、情報が少ないので立ち上げました。

【バイクレースに参戦したよ】

オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。

 

 

【うそつき天国】

 

オランダの都市部にて、下車するたびに”ココこんなに人住んでるのかよ”と驚く日々を送っている。

 

昨日、初めてデリバリーライダーにチャレンジした。

 

今月から週1、2のペースで働き始めた寿司屋の宅配だ。

 

厨房と宅配の両方に入るハイブリッド型店員として雇われた。

 

これはアクシデントによるものだった。

 

十中八九私の責任なのだが、何故かアクシデントと感じてしまった。

 

その時私は、他のお店にてライダーとして働くか悩んでいた。

 

悩んだ結果、その日はライダーの勤務初日を予定していたのだが電話でキャンセルしたのだった。

 

電話口で”また来週予約し直します”と伝えたが、その来週はまだ来ていない。

 

つまり、私はデリバリーライダーになっていない。

 

必要な書類は揃えて提出済みだが、まだ初日を迎えていなかった。

 

ゆらゆら悩んでいる最中、寿司屋の面接が入ったのだった。

 

私はオーナーからの他に仕事はあるか、との問いになぜかまだ働き始めていないのに堂々と口にした。

 

”ライダーもやってます”

 

正確にいうと、”ライダーになろうか悩んでいます”だ。

 

もっと正確にいうと、”シフトに入れてもらったけど急に面倒になって行かなかった”だ。

 

その返答に「そうなの!実はたまに注文が入るから配達して欲しいんだよね」とオーナーは嬉しそうだった。

 

え。

 

こういう展開になろうとは、この会話の角を曲がる前の私には予想出来なかった。

 

そうして私はライダー(未定)のまま、昨日、ライダー初日を迎えたのだった。

 

言えない。

 

まだ一回も配達していないなんて、言えない。

 

オーナーはさっさと外に出て私に自転車の鍵を渡した。

 

「ここが電源で、一回押すだけでつくよ。ここでスピード調整ね」

 

ただの自転車ではなく電動自転車でデリバリーがオランダでは主流だ。

 

のろのろと自力で漕いでいられないくらい、人気の証拠だ。

 

なんでもない日に外食することが多い日本だが、

 

オランダではなんでもない日にデリバリーを頼むことが多い。

 

 

 

つまり、私はデリバリー初日に電動自転車の初日も迎えていた。

 

電動自転車なんて、怠け者が乗るものと思っていたので、大阪では一度も乗ったことがなかった。

 

渡された鍵を手ぶくろ越しに握りしめた。

 

初めて尽くしで脳が強制終了しそうだった。

 

もっと外気温が低ければ頭からぷすぷすと、黒煙の見るからに体によくない湯気が確認できたに違いない。

 

その電動自転車には、スマホを置く装置がついていなかった。

 

いちいち速度をゆるめて、左手で地図アプリを確認しなければならない。

 

前かご部分にでかでかと配達物を入れるボックスがついているため、電動自転車は私の想像をはるかに超えて重たかった。

 

なんとか道に押し出した。

 

もう寿司は中に入っている。

 

絶対に倒してはならない。

 

サドルを最大限に下げても、自分の自転車より少し高い。かかとで地面を蹴った。

 

止まる時はゆっくりにしなければ、寿司より私が危ない。

 

最悪なことに、店は街中にあった。

 

すぐ左手にある石畳のメインストリートに出れば、バスが縦横無尽に街中を走り回っている。

 

私はまだこの世に未練があるため、バスに轢かれないように慎重に後ろについていった。

 

前カゴが信じられないくらい重い。急にハンドルを切れば重心を見失ってそのまますっころびそうだ。

 

一番の繁華街だが、二車線しかないので停留所でバスが止まれば対向車を確認して反対車線に出るしかない。

 

私にはその勇気がなかった。

 

バスを追い越せずのろのろと、2つの停留所で私も同様に停まっただろうか。

 

電動自転車の意味がない。

 

むしろ、モーターを搭載している分普通の自転車より重たくて損をしている気がする。

 

 

しかし、配達先が郊外で、街中より道の広い街だったことが功を奏した。

 

最初は速度2で店からスタートしたが、帰る頃には6で漕いでいた。

 

片道20分で心配なく乗れるようになっていた。

 

というか、片道20分って配達距離のマックスなのではなかろうか。

 

初っ端からそれを引くなんて、やはりそういう星の元に生まれている。

 

緊張でびちょびちょになった手とほんの少しの安心感と共に店に帰ると、満面の笑みで同僚は言った。

 

「おかえり。配達、もう一軒あるよ」