【オランダの病院で働いている 19】
オランダの、ユトレヒト市民なら一度は入院したことのあるどでかい病院で働く日記。
先日、マケドニア出身のズヴェッタにこう言われた。
「あんたズボンのサイズ合ってないね」
そう、腰回りが合っていなかった。ダボダボだった。
病院のユニフォームは医者もシェフも食堂スタッフも同じだ。
何千枚と在庫のあるユニフォームはユニフォームマシンから提供される。
自分のパスをかざすと、上下どちらが欲しいかマシンのタッチパネルに表示されるので、欲しい方をタップすると自販機のように取り出し口からユニフォームが出てくる。
自販機と違うところは、中でアームがウィンウィン動くので30秒程度かかることである。
ユニフォームがつっかえることもあるらしく、故障中のこともしばしばある。
それでもユニフォームを誰でも自由に持っていけるようにしたくないのは、そんなことをすれば誰でもユニフォームを身につけて医者になりすませるからだろう。
「今回のユニフォームはハズレだった」
私はズヴェッタにこう返した。
たまにゴムの伸びたゆるすぎる腰回りのユニフォームに遭遇してしまうのだ。
その後で、同じくマケドニア出身のゴルカに会った。
「あんた、ズボンだるだるだね」
マケドニア人は他人の腰回りをよく観察しているのだろうか。
やらしい。
それとも、触れずにはいられないほど私はズボンが脱げてレギンスが丸見えだったのだろうか。
「脂肪がないからだよ。私の脂肪分けてあげようか!」
あげようか?ではなく、あげようか!と言い切る、まるでデーモン閣下のような尋ね方だった。
お前を蝋人形にしてやろうか!
「やめてください!」
少しふくよかなゴルカに言えるはずもなく、「ちょっと欲しい」というおもんない返しをして話は終わった。
おもんない返しをするくらいなら、腹の底から「昔72キロあったんでもう二度と肥えたくありません!」と言えば良かった。