オランダに住んでいる人(31歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【マクドの話】
オランダの片隅にて、熱い白湯は苦手なのにポットが沸騰してから毎回「もっと早く電源を落とすべきだった!」と思う日々を送っている。
私はフードデリバリーの仕事をしている。
配達先はバラエティに富んでいて楽しく、様々なお客様と会うのはこの仕事の最大の喜びだ。
ところで、商品を受け取りに行くレストランにバラエティはあまりない。
マクドナルド。
昼も夜もこの街の人はマクドを頼みがちである。
多い時は店内のベンチにライダーが5人以上たむろしている。
その日、もはやライダー専用と化したカウンター手前のベンチは空いていた。
夕飯時の店内は、ちらほら空席はあるものの混んでいた。
いつもと違ったのは、普段業者とくっちゃべったり、お客様とくっちゃべったり、従業員とシフトの相談をしているマネージャー(以後、ジャーマネと呼ぶ)らしき人が猛烈に働いていたことだ。
私にとって誰かとのお喋りは猛烈な業務に入らない。
彼はポテトを揚げ、あとはドリンクを乗せるだけとなったトレイをカウンターに置き、出来上がったテイクアウトの商品を袋に詰めて、お客様を呼び出していた。
そう、めちゃくちゃに働いていた。
普段ならそこに3人は配置されているであろう仕事を、1人で行っていた。
ぽよんぽよんのお腹をたゆんたゆんに揺らしながらテキパキと商品を捌いていた。
「そんなに無断欠勤に遭ったの・・・?」
私は少し同情しながら彼を見つめていた。
「XXできたよ」「XX揚がるよ」
的確に指示を出していく彼を見て思ったのだ。
やれば出来るじゃん。
そもそも普段から”やれば出来る人”であるため、業者と話したりシフトの相談を受けているわけだ。
どうやら彼はくっちゃべるだけの男ではなく、正真正銘のジャーマネ的のようだった。
彼は私を「いってらっしゃい!」と見送ってくれた。
いつもダルそうに袋を渡してくる従業員は、そういう規則でもあるのか絶対にライダーに声をかけない。
声をかけられたことに些か驚いてしまったので、何の返事もせずに店を出てしまった。
今度はちゃんと返事をしたい。
ジャーマネの働きぶりをまた見たいが、つまり誰かがブッチしたことになるので悩ましいところだ。