オランダワーキングホリデー情報局

オランダでのワーキングホリデー(2021-2022)の情報基地。毎年200人行っているはずなのに全員地球からログアウトしたのか、情報が少ないので立ち上げました。

【謎のパーティー集団】

オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。

 

 

コミュ力バケモノ】

 

オランダの住宅街にて、毎朝ハトに叩き起こされる日常を送っている。

 

先日、仕事のデリバリー中に滅多にないことが起こった。

 

まぁ、滅多にないことが起こるのが私の生まれた星なので「あ、そうすか」と何とも思っていない様子で対応した。

 

そのお店は入り口付近で待機するのではなく、デリバリースタッフはこちらからお入りくださいと別のエントランスが用意されている珍しいお店だった。

 

よほどレストランの方が繁盛しているか、よほどデリバリーがたむろすることを嫌悪しているかのどちらかだろう。

 

木製のエントランス扉を押すと、そこは路地裏だった。

 

表から見ると立派なエントランスなのだが、入ってみると薄暗くて、ビールの空き箱が無造作に並んでいた。

 

なるほど、デリバリーに親を殺されたらしい。

 

好意的なお店なら、店内の空いている席に”座っていいよ”と誘導してもらえることもあるからだ。

 

通路の奥のビールの空き箱の上、

 

ゲームならラスボスの座る位置にもう一名のデリバリーがすでに待機していた。

 

私はちょうど店の勝手口から出てきた店員さんに「フィリップ!」と口にした。

 

彼の名前は初対面なので知らない。

 

だが、デリバリーではオーダーナンバーではなく、お客様の名前を記号にしている。

 

例えばマクドナルドでは見た目どこからどう見てもアジア系の私だが、お客様の名前がローラの場合。

 

「ローラ!準備出来ました!」と呼ばれれば、

 

「私です!」と返事して商品を受け取っている。

 

なのでこの場合、私は店員さんに出会い頭に用意してほしいお客様の名前を口にしたのだ。

 

すると思っても見ない返事が来た。

 

「君もフィリップなの?」

 

ビールの空き箱に腰掛けていた大柄な青年だった。

 

びっしり生えたまつ毛が羨ましい。

 

「フィリップだと思うんだけど、この綴りフィリップでしょ?」

 

私はスマホを彼に差し出した。

 

彼はちらりとスマホを見やると、

 

「うーん、フィリップだね」

 

どうやら同じお客様らしい。

 

「じゃあ、オーダーナンバーはどう?XXXなんだけど」

 

「僕もXXXだよ」

 

「つまり、どっちかが間違いってこと?」

 

「いや、ちょっと待って確認してみるね」

 

彼は手慣れた様子でデリバリーアプリを操作していた。

 

私はその操作画面を見たことがなかったので、あとで聞こうと思った。

 

1分も経たないうちに、問題は解決した。

 

「分かった!フィリップはオーダーが多いんだ。だからデリバリーを二人手配したんだ」

 

なるほど、一人のバックパックに入り切らない量がこれから手渡されるというわけか。

 

「フィリップ、今夜パーティーするつもりやん」

 

「金曜日だからね〜」

 

「でも私、自分のチャリで配達してるから、遅くなると思うわ」

 

「自分のチャリでやってるの?」

 

私は”足が短いのか用意された電動自転車は地面がえらい遠くてね”と言いたくなかった。

 

「そうなの!」とシンプルな返答をした。

 

5分ほど経って、店員さんが袋を6つ手渡してくれた。

 

袋は小ぶりで、中身に液体はなく軽かった。

 

ここにビールなどが追加されると途端に重くなるので私は嫌いだ。

 

フィリップに感謝した。

 

私はさっさと自分のチャリの元に行こうとすると、彼は「うわあっぶね!」と叫んだ。

 

彼「一番大事なものを入れ忘れてた」

 

「何?」

 

「自分の夕飯」

 

彼は誇らしげに8個入りのドーナツを掲げた。

 

私の今日持参した間食はプロテインバー2つだったので、ドーナツ8個も食うんかい・・・と思ったがどの国でも失礼に当たるので言わないでおいた。

 

私「夕飯ないと死ぬよね」

 

「大事でしょ〜!」

 

店を出て、チャリにスマホをセットしていると、目の前に先程の青年が現れた。

 

「一緒に行こうよ」

 

私は、飛び上がるほど嬉しかったので実際に飛び上がりながら「じゃあついていくね!」と船頭を彼に任せた。

 

誰かと配達するのは、初日のレクチャー以来だ。

 

幸運な偶然と、私が電動自転車ではないので何度も振り返って所在を確認してくれる彼に感謝した。

 

彼はマップに従わず、空いている道を選んで移動していた。

 

もう長いことこの街でデリバリーしているのだろう。

 

出会う同じ会社のデリバリーに手を挙げて挨拶したり、曲がるときもはっきり分かるように腕を上げていた。

 

私はもっと腕を上げて車に合図した方がいいのだな、と短時間ながら勉強になった。

 

着いた場所は郊外にあるキャンプ場兼研修施設だった。

 

どうやら仲間で借り切ってわいわいできる施設らしい。

 

敷地が広くて、どこがオーダーの”G棟”なのか分からない。

 

管理棟の前に大きなマップが立っていた。

 

「ここで確認する?」

 

私が言うと、彼はたまたま管理棟から出てきた男性にすでに声をかけていた。

 

「Gってところに配達してるんだけどどこか分かる?」

 

すごい。

 

彼にもこのマップは見えていたはずだ。

 

私はもし地図があれば、人に聞く前に地図やスマホで完結させようとする。

 

コミュニケーション能力が桁違いだ。

 

彼は出てきたお客様に「パーティーでもしてるの?」と聞いた。

 

私も気になっていたところだ。

 

「上の階でスキーパーティーしてるの。みんなでスキーの格好だけして、実際は滑らないんだけど。」

 

 

 

 

今まで聞いたパーティー史上、一番謎のコンセプトだった。

 

「楽しんで!」とお客様と彼と別れた。

 

スキーパーティーについての詳細をお待ちしている。