オランダに住んでいる人(31歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【会話の綺麗なオチ】
オランダの片隅にて、マッサージオイルなど買ってみて青タンが早く治らないかなとすり込む日々を送っている。
先日、3時間の配達中にオーダーが3件だけという非常に穏やかな日があった。
その日は晴天で、風も強すぎず暖かい日中だった。
配達先が駅前の会社だったので駅に戻り、木陰に腰掛けていた。
駅前だが利用者の少ない駅なのでのんびりとしていた。
合計80分も暇だったので散歩に行って帰ってきた妙齢の女性に「帰ってきたね」と声をかける余裕すらあった。
女性「あら、私のこと覚えてたの?」
私「犬がかわいかったので覚えてました」
女性「私じゃないのね・・・。」
その後、小説の新刊のような厚さのiPadを首から下げたお兄さんに声をかけられた。
黄色い反射ベストを身につけた身長の高いイケメンだった。
きっと会社でオリジナルで製作しているなんちゃってiPadなのだろう、見るからに重そうだ。
彼が特急のスピードで話しかけてきたので、聞き取れなかった。
もちろんオランダ語である。
店先でも配達先でもスーパーでもないこのシチュエーション。
上記なら会話の冒頭が聞き取れなくても、シチュエーションから言葉を想像できる。
例えば、
「現金で支払いますか、カードですか?」
「袋はいりますか?」
「持ち帰りですか?」
今回は何のヒントもない。
何ならお兄さんは黄色い反射ベストを身につけているので、何かを注意されたかもしれない。
私は秒で二つの予想を立てた。
「その自転車は君の?」
自転車撤去の方かもしれないからだ。
「休憩してるの?」
これが街中で休んでいると最も言われる言葉だからだ。
私の制服はサボるには目立ちすぎるオレンジ色をしている。
「ごめん、なんて?」
私は観念して聞き返した。
お兄さん「次のオーダーを待ってるの?って聞いたの」
いつも聞かれる「休憩してるの?」の進化系だった。
くそぅ、ゆっくり考えれば分かったかもしれないのに。少し悔しかった。
「お兄さんは何してるの?」
「僕は木の剪定をしてるんだけど、今は次にどの木を剪定するか記録しにきてるの」
なるほど、記録のためのiPadだったか。
というか、そんな仕事あるのか。
道にはみ出た街路樹を剪定している場面が数多く見かけるが、事前に調査しているとは知らなかった。
むしろ、適当に走って適当に切っているのだと思っていた。
「この木は剪定しない方が良さそうだね」
「なんで?」
「君が木陰で休んでるから」
上手い。
イケメンな上に返し上手いんかい。
二物与えんなよな〜、と空を仰いだ。