オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【エサじゃなかった】
オランダの都心に住んでいるけれど、絶賛夜のロックダウンが続いており田舎の南部にいた頃とお店の営業時間が変わらない日々を過ごしている。
私は運転が下手くそだ。
だからか分からないが、凹と凸のように、マイナスとプラスのように、ベストフレンドは運転の上手い人が多い。
そんな中、先日友人に動物園に連れて行ってもらった。
駅から遠いので車があるならぜひ行きたいとお願いした結果だ。
動物園は屋内と屋外があり、屋内は温帯なので冬でも寒くないことがウリだった。
私たちが屋外にあるメンフクロウの前に行くと、たまたま飼育員の方がエサを持ってきていた。
動物園で最も好きな場面に遭遇できて心が躍った。
一眼を持ってくればよかった、何かを食べている動物たちは画になる。
飼育員のお兄さんが、「この子毎回飛びついてくるんだよね」と言いながらゆっくり金網のドアを開けていた。
勢いよく開けばドアと金網にフクロウ氏が挟まれるであろう。
とても慎重に開けていた。
お兄さんが青いバケツからエサを出して丸太を立てたような止まり木に置いた。
ひよこだった。
オレンジの足がだらんと垂れ下がっている。
私は思わず「うわ!フルーツか何かだと思ってたのに!」と口にしていた。
友人は「持ってくる時点で足が見えてたから知ってたよ」と笑った。
足が見えていた割にはノーリアクションだったではないか。
お兄さんこのフクロウはフルーツを食べないよ、と半笑いで返してくれた。
そうか、フルーツを食べるならばあんなに尖った爪はいらないか。
ふわふわのひよこをむしり取って食べているシーンを一眼で撮る勇気はなかっただろう。
日本の動物園ではエサの肉は切られて置かれるので、毛がついている物を見たことがない。
そういえば前にひよこをエサとして丸ごと置いているのを見たのも、同じくオランダでアムステルダムの動物園だった。
すぐに死にたいとか口にするくせに、日本は死は隠す。
動物園でも"見るからに死んだ動物"ではなく、手を加えた"エサ"を与える。
隠されることが当たり前だったので、エサではなく見たまんまの死を受け入れるのにはしばらく時間がかかりそうだ。