オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【踊ってない夜は気に入らない】
オランダのそこそこ都心で、ロックダウンだがテイクアウトグルメを楽しんで順調に肥えている。
先日、オランダ語の先生からフライドポテト屋さんを教えていただいた。
フライドポテトといえば、オランダの国民食と言って遜色ない。
何でもない日から、特別な日まで奴らは馬鹿の一つ覚えみたいに食いまくる。
急に口が悪くなってしまったが、招かれたクリスマスディナーの食卓にもフライドポテトを見つけた時は絶句した。
心優しいお母様に
「いる?」と聞かれたが、
「今日はいいです」と断ったほどだ。
先生とは会話の流れで「このお店知ってる?」と聞かれたので、「知らん」と答えた。
先生は優しいので、すぐにGoogleマップを開いて教えてくれたのだった。
なんだか気になったので家からせっせと自転車を漕いで食べに行った。
着くと普通のポテト屋とは少し違うらしくSMLではなく、
子供サイズ、普通サイズ、大きいサイズと表記してあった。
私は迷うことなく子供サイズを選択した。
店員のシャラシャラ金髪のお兄さんは
「子供サイズね?」と繰り返した。
「いいの?足りないかもよ?」と言いたげな瞳であったが、いいに決まっているのだ。
子供サイズでも日本でいうところのMサイズが出てくるはずだ。
「うん、合ってるよ」
そう返すとお兄さんは急に歌い出した。
打ち間違いではない、歌い出した。
私はコールドストーンアイスクリームに来たのかと思ったが、アイスクリームを作っている人はどこにもいなかった。
好きなBGMだったのだろう。
店内を見渡すと同年代の青年と2人で店番をしていた。
察するに、店長のいない時間帯だから自分の好きな曲をかけているのだろう。
完全に歌9割、レジ1割で働いていた。
10代なのかな、色んな意味で若いなぁと考えていると私の後ろからもう1人の店員さんが登場した。
こちらも10代に見える彼は、シャラシャラ金髪に茶色い手のひらサイズの箱を手渡した。
中からチキンが三枚はみ出ている。
おつかい帰りの彼はそのまま厨房に入っていった。
シャラシャラ金髪は、チキンをそのままレジ前の透明なショーケースに置いた。
ポテト屋さんなのにチキンも売ってるのか。
私はポテトを待ちながら、パン屋でおにぎりを買うタイプなので、そのメニューを探していた。
ない。
ふとシャラシャラ金髪を見ると、チキンにむしゃぶりつきながら次のお客さんのレジ操作をしていた。
お前のメシかい。
じゃあ売り物みたいに置くなよ、これ下さいって言われちゃうぞ!
私は段々ポテトよりチキンが食べたくなってきた。
指をぺろぺろ舐めながらレジのiPadを打っているところは頂けないが、とても良さそうな昼飯のセレクトだ。
先生のおすすめは間違いなく美味しかったが、
翌日、私はケンタッキーに走った。