オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【だい、じょうぶ、だ、よね?】
オランダの都市部にて、土地勘を養うためにあえて毎日道に迷いながら過ごしている。
本日、私は初めてレンタサイクルを借りた。
オランダで一番規模が大きいと言ってもいいだろう、NS(鉄道会社)がやっているOV-fietsを借りた。
私はオランダには過去7回観光で訪れていたが、チャリを借りたことは一度もない。
元来歩くのが好きなので、この日も仕事に行くため渋々借りてみただけである。
借りるために必要なOV-kaart(顔写真入りの個人用)を持っていたため、カードを作る必要がなかったため、すんなり借りることができた。
チャリのサドルにカードを置き(前の人が読み取りやすいようにそうやっていただけなので正式ルールではない)
入り口の係員さんにカードとチャリ本体についている”なんか黒い機械”を読み取ってもらった。
それだけ。
たったそれだけで一日レンタルすることができた。
しかし、私はその前に難関があった。
高さである。
オランダのチャリは問答無用で全部サドルの位置が高い。
以前働いていたホステルのチャリのサドルを、これまたホステルの工具を使って底辺まで下げたら、次の日から「1番のチャリはりんちゃん専用になった」と言われてしまった。
ここに住むチーム上背は、低いサドルを嫌う。
私は時間に余裕を持ってOV-fietsの駐輪場に到着した。
もちろんサドル調整のための時間だ。
駐輪場で、ずらっと並んでいる”借りるゾーン”から好きなチャリを選ぶ形式だ。
あらかじめ少々サドルの下がっているチャリをチョイスし、それでも高いのでぐいと留め具を引っ張り、ぐぐぐとサドルを押し込んだ。
最底辺まで押し込んだところで乗ってみた。
高い。
かろうじてつま先がつく高さだ。
初めてのレンタサイクル、しかも大都会ロッテルダムを漕ぐつもりだったので、これでは心許ない。
私は意を決してそのチャリをゆっくりと元の位置に戻した。
サドルを下げている間に、もっとサイズが小さいチャリを隣のレーンに発見したからだ。
ひょっとしたら子供用かもしれなかったが、ぜんっぜん恥ずかしくない。
合うサイズというものがある。
サドルを底辺まで下げた。
うん、両足がつく。非常に安心感がある。
ほっとしながら入り口に向かうと、20代と思われるお兄さんが怪訝な顔をした。
「な、何か変?」
”そのチャリはお子様用だけど”などと言われようものなら英語が理解できないふりをして出ていくつもりだった。
合うサイズというものがある。
「サドルが曲がってるから直すよ」
ただの親切な青年だった。
疑って悪かった。
「私、初めてレンタサイクルするの!」
無駄にキラキラした笑顔で伝えると、「楽しんで!」と言ってもらえた。
チャリ一つ借りただけだが、そこには私の好きなオランダが詰まっていた。
この後、フリースを履いてこなかったために太ももが凍てつくように寒くなったので、次回からチャリに乗る時はおしゃれなど関係なく着込もうと強く自分に誓った。