オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【2ユーロいらないの?】
本日は天使のような友人の話をしたい。
私が地球上で最も意地悪と思われるオーナーの部屋に住んでいた頃の話だ。
「うちに一部屋空いてますよ、いつでもどうぞ」
暗雲垂れ込める私の、ずっと雨が降っているような生活に一筋の光が入った。
毎日「どうやって家に帰らないでおこう」と家出少女のようなことを考えていた私にとってありがたい話だった。
その頃、私はオーナーの監獄を脱出して、違う友人の家に転がり込んでいたのだが、私が「1週間いる」と伝え損ねていたので、そろそろおいとませねばならなかった。
そう、私は提案にありがたく乗り
「行きます!」と伝えてまた人ん家に転がり込んだ。
移動の回数を重ねても、荷物は相変わらず新鮮に重い。
肩がもげそうだった。
今回は完全に初対面だ。
初対面のどこの馬の骨かも分からない野郎(見た目は女性)に彼女がかけてくれた言葉は優しかった。
「洗濯機使います?」
「乾燥機もいる?」
「お風呂沸かしときますね」
私はいちいち
「洗濯は2ユーロかからないんですか?」
「乾燥機は4ユーロかからないんですか?」
「お風呂使ったあと床にワイパーかけなくていいんですか?」
まるで刑務所から脱してきたよろしく疑問が思い浮かんだが、
「じゃあ2ユーロで」
「じゃあ合計6ユーロです」
「これ本当に掃除しました?」
と言われたらまた胃がキリキリしだすので聞かないでおいた。
そんなことを聞くやつは、番号で呼ばれてもおかしくない。
私はリフォームしたり、家具を買ったりしている彼女の家を見て感じたことがある。
私と全く逆の基準で物を買っている気がするのだ。
どの街に行っても売ってそうなコスメ。
どの街に移動してもかさばらない毛布。
何で洗濯してもアイロンのいらないシャツ。
なくさないように、覚えられる個数のモノたち。
つまり、"移動"に重点を置いてモノを選んでいた。
住む場所が決まると、もっとディテールに凝れるし、これからずっと使っていきたいモノだから移動性は考えなくてもいい。
ヤドカリもいいけれど、いい加減に定住したい。
大阪からオランダに来たくせにそう強く感じたのだった。
次回はヤドカリが殻を脱いで、新しい部屋からお送りする。
どんなルームメイトなのだろう、パーティー好きではないことを祈るしかできない。