オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【ハガキ職人の一種の憧れ】
オランダの都市部から、「この家結構気軽に人を呼べるぞ」と気づいてから3日連続で人を家に呼んだバカの一つ覚えがお送りする。
先日、友人と、その友人にお会いした。
”その友人”とは初対面だった。
私は初対面の人とは、いささか緊張してしまう。
その緊張を覆い隠そうと、しばし地(じ)が出てしまう。
私の地とは、関西弁だ。
私にもかろうじてある、脳みそのどこかしらの賢い部分が、自分をリラックスさせようとお国言葉を喋らせるのだ。
その日も「なんでやねん」「兄さん堪忍しておくんなはれ」「でんがなまんがな」など、横山やすしばりの強い関西弁を操っていた。
ふと「お化けって信じる?」が議題に上った。
オカルトといえば、私が三年ほど前からハマっているジャンルだ。
最初はきっかけとなった、松原タニシさんのラジオや書籍を読んでいたのみだったが、
昨年は怪談イベントに足を運ぶなど、次第にお金も時間もつぎ込むようになっていた。
オランダに来る直前、投稿型の怪談コンテストに参加したこともある。
いわゆるラジオ番組のような形式で、視聴者から創作でも都市伝説でも実話でもなんでもオッケー、話を募集して各チームの主将である怪談師がそれを朗読して対決するルールだった。
そのコンテストに、関西代表として投稿を選んでいただいたこともある。
残念ながら私の実話怪談は初戦で敗れてしまったが、きっと数多あった投稿から選んでもらえたことは、既にゴールテープを切ったような嬉しさだった。
そこまで怪談に情熱を注いでいる私は、もちろんお化けっているよ!・・・とは思っていない。
いたら世界がもっと面白くなるからいてほしいな、である。
はてさて、初対面でこんな文字量を語られたら
”あ、こいつやべぇな”
と思われてコートに袖を通されるかもしれない。
私は彼女からの問いかけに、誰か好きな怪談師がいるのではないかと思い、逆に聞いてみることにした。
「都市ボーイズさんとか好きですか?」
怪談界の中でも、知名度トップのYouTuberだ。
喋りが面白い人は文章も面白い、お二人の書籍も面白かった。
「都市ボーイズさんより、松原タニシさんの方が好きかな」
頭のボルケーノが噴火した。
私の頭の中の一番阿呆な部分が「言うとけ!言うとけ!」と暴走し始めたのでペラペラ喋り出した。
「私も松原タニシさん好きなんですよ!著書全部持ってます!一冊はサイン入りです!漫画化の方も全巻揃えてます!テレビ大阪のレギュラーも毎週見てます!」
風圧で言えば台風だったと思う。
それでも彼女はにこにこ聞いてくれた。
最後に私の恥ずかしいラジオネームを口にした。
彼女「え!知ってる!」
なんと光栄なことだろう。
夜中にシコシコ一人でネタを考えたり、日常生活で「これは今度あそこに送れそうだな」とか考えているラジオ好きにとって、ラジオネームを知られているとは一番の名誉と言って差し支えない。
というわけで日本では叶わなかったが、何故かオランダで「ラジオネームを言ったら相手が知ってくれている」を実現した。
生きるって素晴らしい。