オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【自分で掃除します】
オランダに住んでいるオランダ人でさえ「知っているけど行ったことはない」と答える微妙な街にて、住み込みで働いている。
私の働いているホステルのお客様について書こう。
9〜10月はほとんど学生だった。
大学都市なので、新学期の部屋探し戦争に出遅れた学生たちが多く滞在していたのだ。
日本では想像のつかないことだが、オランダでは大学都市に限らず、住宅不足が深刻だ。
駅前にWi-Fiの通じている信じられないくらいバカでかい公園があるにも関わらず、アジアでよく見る超高層ビル、味気のないマンションの軍団を彼らは建てないのだ。
そんな中、大学で職についているのに部屋探しにあぶれているスロバキア人がいた。
詳しく聞いていないのだが、ひょっとしてホステルの雰囲気が好きで自ら滞在しているのかもしれない。
私がそう感じるに至ったのは、彼がリビングルームで泥酔していた時のことだ。
「ウォッカ飲む?」
20時に聞く挨拶ではないと思ったが、ウォッカはまあまあ好きなお酒なので「断る理由がない」と返事をした。
結果それが、オランダで初めて吐いた経験になった。
夕飯のラザニアが全部・・・おっと失礼しました。
彼は「全然高くない。水と一緒」と37度のウォッカをファンタオレンジの廉価版と共にグビグビ飲んでいた。
彼に付き合った私は2ショット目で脱落した。
それでもへべれけなので、顔が真っ赤だった。
そこから数日後のことである。
朝、インド人と朝食の準備をしていると、お客様(ドイツ人)がエスプレッソを注文しにやってきた。
「あのさ、食事の準備中に悪いんだけどトイレにゲロがあったよ」
食事の準備中じゃなくても聞きたくなかった言葉である。
「うそやろ・・・」
関西人(私)と共に絶句するインド人。
私はここで働き始めてから2ヶ月経とうとしているが、そういえばおゲロ様に遭遇したことはない。
おゲロ様は、そうそうお目にかかれないので様付けで呼ばせていただいている。
ドイツ人「トイレの床にドバッ」
インド人「わかったわかった。後で掃除に行くから大丈夫。」
朝食の後、トイレに到着するとスロバキア人が現れた。
「俺、自分で掃除するわ」
「「お前かい」」
インド人「りんちゃん、あの人ってウォッカ勧めてきた人でしょ?」
そうだよ、と返事をしながらとうとうウォッカに負けたか、と何故か哀しい気持ちになった。
彼は掃除器具の説明を聞いて、黙々と床を磨いていた。
その後「よかったら住み込みスタッフにならない?」とインド人に誘われていた。
やめてくれ。
彼がスタッフになったら夜な夜なバーでスタッフにとっては未来永劫無料のビールを飲み明かすに違いない。
サーバーから直で胃に流し込むに違いない。
ま、でも自分でおゲロ様の始末をしてくれるからいいか。