【オランダの病院で働いている 23】
オランダの学校みたいな病院で働いている。
キリスト教が多いオランダだが、先日「自分を愛するように人を愛することが教えじゃなかったの?」と感じたことがある。
その日は11:30からの出勤だったので家でゆっくり夕飯を準備する余裕すらあった。
味付けが足りないと後々知ることになるたらこスパゲッティである。あとでたっぷり醤油を足した。
ユニフォームの自販機が二階にあるので私は作業場の真上の廊下を歩いていた。右を見下ろせば食器が集まってくる作業場が見渡せる。
お腹が空くような、いい匂いがした。
嗅いだことはあるけれど病院に似つかわしくない匂いだ。
サムが匂いに誘われてポップコーンマシンまでカートを引っ張る車で移動していた。ポップコーンか。
私なら「こいつ匂いに誘われてきたな」と思われたくないので、いい匂いが漂ってきたしても我慢してしまうところだ。
だからサムは面白い。食欲丸出し。
それを主任のコルとパート仲間のヒューゴが見ていた。二人も香ばしいコーンの匂いに釣られて作業場から出てきたようだ。
私が自販機からユニフォームを取って帰ってくる頃、ポップコーンマシンを操作していた男性がポップコーンを8袋ほど事務所に持って入るのが見えた。
事務所は50名いる従業員の中で5名いるリーダーズだけが主に出入りする二人座れば満員の小さな部屋だ。
なんて気の利く男性なんだろう。
恐らく病院内のイベントの準備か、イベントの残り物であろう。全くそのイベントに関係ない皿洗いチームに恵んでくださったのだ。ジーザス。
そのポップコーン8袋が事務所から出てくることはなかった。
”隣人を自分のように愛しなさい”
じゃなかったっけ?キリスト教?
”隣人に隠れてポップコーンを喰いなさい”
って言ってたっけ?ジーザス?
もしも世界がウォーキングデッドみたいな殺伐とした殺し合いが前提の社会になったとしたら、大切な食料のポップコーンを隣人に分け与えるのは馬鹿馬鹿しい。自分が生き残れなくてどうする。
隣人の体脂肪率増加を思って教えてくれなかったのかな。
俺は上から見てたぞ?
お前たち、5人でこそこそ何を鳩みたいにつまんだんだ。
俺は上から見てたぞ?
それを職場で誰にも言わずにお前たちの分からない言語で世界に発信するのが私だ。
俺は上から見てたぞ?