オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【意味分かんないもっかい言って?】
オランダのほとんどオランダと呼べない南端のホステルにて、住み込みで働いている。
今週、新しい動きがあった。
コロンビア出身の法律を勉強していたCちゃんが去り、三日以内に22歳のイタリア人が入ってきた。
ホステルで働く人は、「部屋を見つけるまでの間」「人生をかけた旅行中」「ワーキングホリデー」と様々な理由を持ってくるが、彼の理由は新しかった。
「友達に呼ばれたから」
デリヘルなん?嬢なん?
ベストフレンドがこの街の大学に通い始めて、大層気に入ったので彼にも薦めたらしい。
イタリア人の彼は英語を勉強中だ。
驚くことに、日本人の私より単語がおぼつかない。
初日のことだった。
「ベッドを作ったらバスタオルを上に置くねん」
「バス..」
「バスタオル。」
「何それ」
まじか!
私はにっこり業務用スマイルを浮かべながら、四角い形を指でかたどった。
「バスタオルね!分かった。」
何語も最終的にはジェスチャーだ。
ちなみにこれをホテルのフロントでやると"パスポート"の意味になる。
「じゃあ、イタリア語ではバスタオルをなんて言うの?」
「▽X◎bw○」
2秒で忘れたのでここに書くことはできないが、長かったことだけは記しておこう。
そんな彼を囲んでオーナーとランチを一緒に食べた日のことだ。
オーナー「最初にね、このホステルを作る時。妻がイタリア人だけは従業員に入れるなって言ったんだ」
私「え?」
オーナー「イタリア人は英語がいまいちだし、仲間内でイタリア語で喋り出したら止まんないからさ」
私はそれをイタリア人の前で話すオーナーの神経のなさに驚いたが、すぐさま彼は言葉を足した。
「でも実際に雇ってみたら、そんなことはない。みんな一緒だよね!だからホステルにようこそ!」
私は出来る限り大きな声で「ようこそ!」だけ合わせておいた。
イタリアの彼はポカンとした表情で見ていた。
彼との初日のシフトを終え部屋に戻ると、イタリア人は友達に電話をかけていたようだ。
声がでかい。
6人の共同部屋にいると思えないほどでかい。
私と目が合うと「Chao!」と挨拶してくれた。
楽しいイタリア人との日々が始まった合図だった。