オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【完璧主義はしんどい】
オランダの小さいのか大きいのかよく分からない街のホステルにて、住み込みで働いている。
先日、11月までいると言っていたコロンビア人のCちゃんが急にホステルを去った。
彼女とはまあまあ仲のいい方だと思っていたので、引っ越しを当日に知らされた時はショックだった。
コロンビア料理をごちそうになったり、アジア料理(韓国のりを数枚分けただけ)を一緒に食べたりしたのに、と。
離れる日は同じ清掃シフトだったので、「引っ越し先はどこなの?」と聞いた。
すると、満面の笑顔で「友達がお医者さんなんだけどね、もうすぐバケーションで家を空けるからその間にペットシッターするの。可愛い猫がいるんだ〜!」
羨ましい限りだ。
私は世界一かわいい飼い猫(ハチワレ)を両親に預けてきたので猫と聞くだけで郷愁に駆られる。ねこねこねこ。
さて、彼女は友達が多い。 滞在の最初の方は彼女の友達が主に私の友達だった。
スペイン語なまりの英語を話す友人たちはたまに私の前でもスペイン語で話し始めるのだが、すかさず
「失礼でしょ!英語英語!」とCちゃんが正していた。
Cちゃんは、誰よりも英語が堪能だ。
そんなCちゃんと、同じく住み込みのインド人が部屋にいた時のことだ。 私はお喋りな二人が黙り込んでいるのを見て、不審に思った。
二人とも最初のうちはペラペラ喋っていたよな、と。
そこからしばらく経って、インド人と二人きりで話す機会があったので聞いてみた。
「もしかして二人、喧嘩した?」
一瞬ハッとした表情を浮かべたが、彼はすぐさまいつものガンジースマイル(笑うと目がなくなる)に戻った。
「俺、Cちゃんのスペイン語コミュニティに嫌われたくさい。全員に無視されてる。」
当時はホステルが満室、スペイン語圏のお客様が半数もいたため、かなりのお客様から突然総スカンを食らったと言うことになる。
その理由に私は心当たりがあった。
Cちゃんから飲みの席で聞いたのだ。
「あいつさ!初日に私が飲んだ分のお酒聞いてきたわけ、だから5杯って答えたら黙ってパソコンに売上入力してさ。ここで働いているのにお金を払ったよ!」
Cちゃんはかつて、デンマークでも住み込みで働いていた。 ここより少人数のホステルは、メンバーが家族にように暖かく、どのホステルよりも素晴らしい居心地だったようだ。
そう語られたら、察するしかなかった。
彼女にとって、ここはそんなに居心地が良くないことを。
恐らくデンマークではホステルで飲んでもお金を請求されなかったのだろう。
金銭が、彼女とインド人との間の亀裂になった。
しかし彼女がこのホステルを去る理由は、そこではなかった。
インド人が教えてくれた内容は、私の知らないCちゃんだった。
「彼女が休みの前の日、何してたか知ってる?」
私は首を振った。
「住み込みメンバーのリビングでドラッグ。お客さんも巻き込んでた。MDMAとか。よく来てたドイツ人覚えてる?」
私「あのめちゃくちゃイケメンの」
「そう思ってたの(笑)あいつとグル。いろんな子に勧めてたよ、現場を見たことはないけど、コソコソやってたからクロだと思う。それで、夜勤と相談してオーナーに直接聞いてもらうことにした。」
言葉を失っていると、同じく話を聞いていたフロントのオランダ人が言葉を繋いだ。
「認めたら、次からはダメだよってオーナーは言うつもりだったらしいんだけど、彼女は『そんなの全部嘘、夜勤とインド人が私を嵌めようとしてる』って言ったらしい」
これが誠実で、会話の仲間外れを作らないCちゃんなのだろうか。
ホステルメンバーの飲み会を欠席して、ベッドで一人スマホを見ていた私に
「次は行きなね、みんな優しかったよ」と声をかけてくれたCちゃんなのだろうか。
「で、りんちゃんから見た彼女はどうだった?」
彼女にとって私は4人目の日本人だと言っていた。
「日本の人は話を遮ったり、電車で大声で喋らないから好き!教育されてる感じがすごいする。」
私にとってCちゃんは、最初に出会ったコロンビア人で、最初に出会ったスペイン語でまくしたてない誠実な子だった。
「そう。それを大切に持っててね。自分が感じたことが一番大事だよ」