オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【人類モテインド人】
私が住み込みで働いているホステルには、現在4名のスタッフがいる。
同じく住み込みなので、ホステルに1日いるとよく部屋で会ったり仕事がオフの日は一回も会わなかったりする。
今回はインド人の話をしたい。
27歳、シンプルな白色の服が多い彼は、暇さえあればジムに通う筋肉バカかと思いきや、細マッチョである。
女性にモテるほどよいマッチョを維持している。
彼がモテる要因は他にもある。
私が住み始めた頃、引きこもりが爆発して地下のスタッフ用のキッチンでYouTubeを観ていた時だった。
過去の自分と重ねたのか、いなくなってしまった誰かと重ねたのか。
「りんちゃん、上に行こうよ。リビングにみんないるよ。」
「嫌だ、怖い」
英語が堪能でない故に凶器に近い、率直な気持ちを口にしてしまった。
うっすら笑った後に彼は「いつでも来ていいからね」と去った。
まるで学校の保健室の先生だった。
別の日、スタッフ用ドミトリーでうたた寝していると、声をかけられた。
「りんちゃん、上で飲んでるけど来ない?」
「怖い、行かない」
「別にね、アドレスとか交換しなくていいんだよ。SNSとか教えないでいいの。その日喋って飲んで終わり!それだけでいいの。英語喋りたいでしょ?」
「喋りたい」
「じゃ、話に行こ!」
引きこもりにとって、きっかけを何回も与えてもらえることはとてもありがたい。
こうして手取り足取り、ホステルに住み続ける心構えを教えてもらったからこそ、フラッと併設のバーに行き、このブログのネタも増えた。
女にモテると言うよりは、全人類にモテそうな彼だ。
ある日の仕事終わりもそうだった。
自分史上最高に忙しかった清掃シフト後、ベッドでくたばっていた。
「明日もあるの?」
「明日清掃したら休み。」
「しんどかったら代わるよ?」
シフト交換はよっぽどのことがない限り行わない。
出たシフトのまま働く方がみんなダブルワークや大学との両立が図りやすいからだ。
「大丈夫」
「本当に?」
「明日だけだから大丈夫や」
彼は仏もびっくりの優しい微笑みを浮かべた後、わかったわかったと言った。
人類モテインド人、敬意を込めて菩薩と呼びたい。