オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【愛想がいいのは情が厚いとは違う】
オランダの聞いたこともないような街のホステルにて、住み込みで働いている。
私が2か月前このホステルに来た時は、6人いる住み込みメンバーのうち、一番新米のひよっこだった。
しかし今や2番目に古株だ。
たった2か月で古株。なんだか他の単語を使った方がいい気がするが実際にそうなのだ。
このホステルに滞在する規約は「最短2か月」だ。
どういうことかというと、ほとんどの人が根を上げて2か月以内で辞めていく。
「思ったよりシフトがしんどい」「共同部屋がつらい」「プライベートな空間がない」
去る者を追わない性格なので、辞めていく人に理由を聞いたことはないが、大体がこれらに当てはまるだろう。
本日、入って2週間ほどのポルトガル人が辞めることになった。
辞めると決めたその日に彼は荷造りを済ませ、さっさと次の住み込み宿に引っ越して行った。
同じ市内なので、来週までは働く予定だそうだ。
しかし、本当に来週までいるのか定かではない。
以前にも「11月までいる!」と高らかに宣言して9月で去った仲間がいたからだ。
ポルトガルの彼は、よくバーのシフトに入っているお喋り好きな18歳だ。
大体ホステル内で会うと「どこか行くの?」「あ、買い物だったら俺もさっき行ってきたよ」「見てみてこれ」など、5分は立ち話をする。
「このレインコート、古着屋で買ったんだ!いくらだと思う?」に高く見積もって
「6ユーロ!」と爆安アジア価格を答えてしまったのはいい思い出だ。
12ユーロだった。
私は感じることがあった。
それは早く辞める人ほど立つ鳥跡を濁さず、と言った具合で辞めていく。
誰かに挨拶し忘れていないか?と思うくらい一瞬でいなくなる。
愛想がいいのに、不思議だ。
自分の居心地の良い場所を見つけられなかった、ならばバッサリ切り捨てる。そういう態度に感じられる。
日本ならば、多少居心地が悪かったとしても送別会やら餞別の品やらを贈るが、オランダではそれが発生しない。
あまりにも短期間かつ、多様な国籍が混じっているからなのだろう。
「今日行くわ、もう一生会えないと思うけどバイバイ」
なんてあっさりした別れなのだろう。
少し寂しく思ったが、あまりにも別れが多いので慣れてきた。
ここはホステルだ。
働く仲間もお客様と同じなのかもしれない。
お客様もメンバーも一瞬一瞬を大事に。
機嫌悪かった?
それが誰かと会う最後の機会だったかもしれない。
人の流れを堰き止める事はできないが、丁寧に接する事は可能だから、私はここにいる。