【オランダの病院で働いている 4】
オランダの馬鹿でかい病院の馬鹿でかい食堂で働く日記。
オランダではパートを掛け持ちする働き方が定着している。
どれくらい定着しているかというと、食堂で仲の良いマリナとマークもパートタイマーである。
それ以外の同僚の働き方を知らないので、私の激せま交友範囲から言えばオランダでは100パーセントの人間がパートタイマーである。
私はまだ兼業していないが、彼らと同じくパートタイマーである。
先日、腰が痛くていつもの木製の平たい椅子ではなくクッションエリアで休憩していた時のこと。
腰が痛いからと言って柔らかい椅子を選ぶなんていよいよババアだな、こういうことを憂う自体がババアだな、とババアにババアを重ねるババア回想を繰り返していたら、隣にマークが座ってきた。
ソファ席は他に3つ空きがあったが、マークは私の隣に腰掛けてきた。
あれ、そういえばこの席はマークがいつも座っていた気がする。
そこに見知らぬ東洋人が座っていようと彼はいつもの場所を遵守する動物でいうとほとんど全ての動物タイプのようだ。落ち着く場所ってそうそう譲れないですよね。
マーク「何食べてたんよ」
「昨日の残りのグリーンカレーだよ」
マークは広島弁っぽいので私の20年間聞き続けたポルノグラフィティ風広島弁で綴る。
「パートナーさんが作ってお前が9割食うっていう算段なんじゃな」
「そういうこと。彼は職場にランチが用意されてるからいらないの」
「ん?どういうこと?」
話が進むと、マークはここ以外にも週末だけ入るパートがあると発覚した。
「XXっていうクラブで働いてるんよ」
「え、クラブってあの踊る?」
なんともババア全開の返しをしてしまった。
「そうそう、お客さんは10代から20代前半が多いかな。みんな踊りに来るんよ」
「めっちゃ若いね」
「若いやろう」
「注文とか聞き取れなさそう」
「え?何?あぁビールねっていうのを繰り返しとるよ。あと暇だったら踊る」
「暇だったら踊るの!?」
「バーの中でな。若い子はわしみたいなジジイが踊ると思っとらんけぇリアクションが面白いんよ」
言い忘れていたが、マークは60代後半の白髪の似合うおじいさんである。身長は190センチくらいある巨木のおじいさんである。
クラブで働いていることも意外だったし、踊ることにもたまげた。
しかしそういえばマークは食堂で働くティーンエイジャーにも気さくに話かかけていた。
クラブでの経験があるから誰にでも気兼ねなく話しかけられるのか、と腑に落ちた出来事だった。
マークの働くクラブを聞いておいたが、行く勇気はない。