オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【俺だけじゃないのね!】
オランダの住宅街にて、夜中に小学校から子供の遊ぶ声が聞こえたので聞こえないふりをした。
本日、私はデリバリーの仕事だった。
金曜日は否が応でも忙しい。
そんな予想は裏切られて、いつもは16時頃からオーダーがひっきりなしに入るのだが、天気のいいことが手伝ってか、今日に限ってそんなことはなかった。
30分ばかり運河沿いでゆっくりした後、この休憩時間が恋しいと思える大事件が起きた。
それは最初のデリバリーを終えてから20分後の出来事だった。
ようやっと次のオーダーが入ったので私は重い腰を上げた。
犬の散歩ルート沿いにあるベンチに腰掛けていたので、かわいいわんこ達が名残惜しかった。
デリバリーはすべてアプリ上で完結する。
商品を受け取る予定の店の横にある、矢印ボタンをタップすると、詳細な地図が表示される。
この日は矢印を押すと、”検索中”のままアプリがなかなか動かなかった。
自分の近辺の地図は出るが、行き先の検索までたどり着いてくれないのだ。
こんなことは今までなかった。
私は、早くも今月のギガの残りが少ないのか、と嫌な予感がした。
デリバリーにとって、ギガは命の次に大事だ。
急いた気持ちを抑え、私はGoogleマップを起動した。
するとGoogleマップはこう答えてくれた。
”インターネットに接続されていません”
どこかで使い物にならないwi-fiを拾っているかもしれないので、wi-fiを切った。
次に、iPhoneを再起動した。
結論はお察しの通りだ。
”インターネットに接続されていません”
デリバリーのアプリを操作できている。
Chromeで”Googleマップ 接続不良”と検索できている。
つまり、GPSがおかしいのだ。
これはAppleの問題なのか、私の端末の問題なのか分かりかねる。
大いに困ったのですぐさま、時間帯責任者のディスパッチャーに連絡した。
すると私がチャットに書き込む一つ前に、ある青年が書いていた。
「俺のスマホがおかしいのか、デリバリーアプリで地図が出ないから配達ができない。Googleマップも出ない。電話はできるっぽい。ちょっと確認してくれない?」
私は古のネット住人なので、彼の投稿に機種などの詳細を付け足した。
「私も出ません!機種はiPhoneで、デリバリーのアプリの地図と、Googleマップが出ない。でもインターネットは接続できています。」
すると、まさしく秒で返信があった。
A「俺もです」
B「私も」
C「それ、俺だけじゃなかったのか」
ディスパッチャー「ちょっと待って。調べます。」
D「アプリなしでどうやって配達すればいいの!?」
D子のおっしゃる通りだ。
私は、次の店であるマクドナルドには何度も足を運んでいた。
がしかし、今いるバス停付近のベンチからどの方向に行けばマクドナルドなのか、全く不明だった。
マクドナルドには両手で数えるほど行ったことがあるが、毎回同じ道というわけではないのだ。
全ては、アプリの指示通りに自転車を漕いでいるだけなのだ。
混んでいる道や、空いている道は1ヶ月やってきておおよそ分かってきたが、それでも何も見ずに配達できる技量はない。
ディスパッチャー「デリバリーのアプリはGoogleマップを引用してるから、Googleマップがダウンしてたら使えない。」
終わった。
今日の仕事が1時間で終わってしまった。
しかし、ディスパッチャーはすぐさま追記した。
ディスパッチャー「XXXという地図はGoogleじゃないから動いているようです。ウェブ版を貼っとくね」
ふざけたおせ。
私は夕方、おひさまがポカポカのベンチで悪態をついてしまった。
ディスパッチャーは私が毎回出勤しているハブポートにもいない。
本社にいるのだ。
本社のパソコンの前で座って指示しているから、ウェブで見ろなどとぬかせるのだ。
私達はスマホで配達しているのに、スマホの小さな画面で、ブラウザ版の地図を見ろというのか!
私は指令を無視して自分で動く地図アプリを探し始めた。
すると、案外早くそれは見つかった。
Appleの”マップ”だ。
使いにくいのでiPhone6の頃から存在を無視し続けていた。
スマホ上に彼を呼び戻す日が来るとは思いもしなかった。
うんともすんとも言わないGoogleに対して、彼はさくさく動いてくれた。
残念ながら”自転車”での到着予想に対応していなかったのだが、Google亡き後そんな機能は二の次で結構だ。
私は「iPhoneの初期に入ってるマップも動くよ!」とチャットに書き込んで配達に再び向かった。
その投稿は誰にもいいねされていなかったが、まあいい。
また、私は休憩中にマップが作動しなくなった異変に気付いたからいいが、中にはこんなデリバリークルーもいた。
A「お店に向かう途中にアプリが使えなくなったから、自分迷子なんだけど。XXってお店、誰かどの近辺か教えてくれない?」
B「それならXXってお店の近くだよ、そっちは分かる?」
A「それなら分かる!」
たくさんの助け合いを見た一日だった。
しかし、マップは使えるに越したことはないので、2度と起こらないで頂きたい。