オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【うちの母ちゃんのカレー】
オランダの都市部にて、今日は過去一番の猛風に耐えながら過ごしている。
先日、オランダの友人にカレーを振舞ってもらった。
作り始めるまで気づかなかったのだが、カレーとは各々の家庭ルールが強烈な料理だ。
まずは私の家のカレーを紹介しよう。
母は1週間の内に全く同じ具材でカレーとシチューを作る猛者だったのだ。
その二刀流カレーの具材はこれだ。
じゃがいも、コーン、玉ねぎ(くし切り)、人参、鶏肉。
ブロッコリー、おくら、いんげんが食べられなかった私によって、緑の一切ないカレーであった。
手順はこうだ。
先に鶏肉を炒め、火が通ったら同じ鍋に人参と玉ねぎを同時にぶち込む。
コーンは最後の最後に入れる。
さて、私が友人から振る舞われたカレーは具沢山だった。
パプリカ、ヤングコーン、スナップえんどう、玉ねぎ、人参、鶏肉。
カレーといえば暖色系だと思っていたが、緑が入ることによってグッと見栄えが良くなった。
ちなみにブロッコリーやスナップえんどうなどの緑のお野菜は大人になって食べられるようになったので、問題ない。
もちろん入っていない方が嬉しいが、問題ない。
人が見ていなかったら避けたかもしれないが、問題ない。
彼は玉ねぎをみじん切りにし、フライパンで先に炒め始めた。
私は玉ねぎがみじん切りのカレーは初めてだ。
食べてみるとしんなりしていて少し焦げた部分もまた美味しかった。
次に鶏肉を炒め、炒め油をシンクに捨てた。
私は大鍋にそのまま野菜たちを投入すると思っていたので、”捨てるの!?”と思ったが、声には出さなかった。
私は大人になってから気付いたのだ。
母は料理が好きでないことを。
きっと、私の教わったルールには色々理に適っていない部分があるのだ。
ここでやっと、そもそも大鍋で炒めていないことに気付いた。
大型のフライパンにどっさり積まれた野菜たち。
その上からたっぷりとカレーソース(液体)を注いだ。
なるほど、そもそもが私の思っていたカレーではなかった。
友人が振る舞ってくれたのは、日本でいうスープカレーだった。
野菜を入れて間も無く火を止めた。
彼の家では、具はそんなに炒めないのだそうだ。
いざ実食。
私はあることが気になっていた。
彼は人参を随分後に入れたのだ。
人参といえば、じゃがいも同様とろとろに煮込むものしか食べてこなかった。
この人参、いささか硬くはないだろうか。
そりゃもう、硬かった。
うさぎのご飯の硬さだった。
私ははっきり言うタイプなので、
「人参入れるの遅すぎたんじゃない?」
と、客人のくせに文句を言ってみた。
「僕は硬い人参のカレーが好きだから」
そんな派閥があったのか。
人参硬め野党の存在を30年間知らなかった。
「うちの人参はほぼ溶けてたよ」
「まじか。どんな味がするんだろう。」
今度私はじゃがいも入りの、溶けた人参入りの、オランダ人を混乱させるカレーを作る予定だ。