オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【捨ててあったんだよ、あれが】
オランダのホステルにて住み込みでブーブー文句を言いながら働いている。
ある日、夜中までゲスト用のリビングでダラダラしていると、19歳の男子大学生がこんなことを教えてくれた。
「前に2階のシャワーのゴミ箱に引く量のピスタチオの殻を見つけたんだ。てことは誰かシャワーしながらピスタチオ食べてるよ!」
シャワーは男女共用で、2階には6つのシャワーブースがある。
左に2個、右に4個とブースは廊下を挟んで分かれている。
建物が元銀行なので、シャワーブースなのに巨大な丸窓がついている。
上の階である4階から、シャワーブースではないが手前の洗面所までは丸見えだ。
その洗面所で私は一度すっぽんぽんの男性をお見かけしたことがある。
さっきまでリビングで話していた陽気なオランダ人だ。
さっきまで話していた人がプリンとしたお尻を震わせながらシャワーブースに入っていくところを4階からたまたま見てしまったのだ。
ゲボが出そうになった。
金髪で筋肉隆々のイケメンだったので観察していたわけではない。
ラッキーなどとは一切思っていない。
ただただ、男女共用で何故洗面所から全裸でシャワーブースに入るのか?と衝撃だった。
このシャワーは一階にはないので、一階に宿泊しているゲストはもれなく2階に来る。
その際に、古くてびっくりするくらい遅いエレベーターを使わず階段で来るゲストが多いのだが、 パンイチでシャワーに来るゲストに遭遇したことがある。
そんなに暑くない10月のことだった。 私は長袖長ズボンだったので、思わず「服は!?」と聞いてしまった。
「服は下だよ〜。今からシャワー浴びるからいらないじゃん」
いるだろ。
浴びた後、寒くなるだろ。
そもそもパンイチでうろうろするなよ。
おかしな人もいたもんだと笑って会話は終了したが、その人以外にもパンイチでシャワーに来る人は度々いたので、今ではシャワーの後パンイチでうろうろしない方が少数派だと思っている。
さて、この話をゲストにした時のことである。
「あのさ、昨日2階でシャワー浴びてたら自分もシャワーは長い方なんだけど、30分以上浴びてる人がいたんだよね」
私は耳を疑った。
13分じゃなくて30分かと。
「その人、30分間無言だったの。時々する咳で男だってことは分かったけど、洗う音も聞こえないから怖かったわ」
いよいよシャワーに幽霊がいる可能性が出てきた。
幽霊にお会いできないことを祈るばかりだ。
そして先日、清掃中にカゴをチェックしていた時のことだ。
カゴはシャワーブースのへりに掛けられるようになっており、服は扉にかけるとして、濡れてはいけないスマホだとかを置ける。
そのカゴによくパンツやら靴下が置き去りの刑にされているので、彼らを救出するためにチェックしている。
そこで見つけたのだ、大量のピスタチオの殻を。
絶叫すると共に急いでブースを抜け出した。
その日の清掃の相棒だったインド人に「見てこれ!」と差し出した。
インド人は男子大学生からピスタチオ妖怪事件を聞いている。
「本当にいるじゃん・・・。」
ピスタチオ妖怪の痕跡に絶句した後、すぐさま彼は吹き抜けの階段から一階に向かって声をかけた。
ピスタチオ妖怪の話を聞いていた他のゲストに報告するためだ。
「ピスタチオの殻見つけた!奴はまだ泊まってる!!」
その奴が今リビングにいたらどうするんだ!と思ったが、リビングは爆笑に包まれた。
どうかこの中にピスタチオ妖怪がいて、せめて殻をゴミ箱に捨ててほしいと願うばかりだ。