オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【安くはない記念品】
私の働くホステルの夜勤のフランス人が先日誕生日を迎えた。
32歳。
本人曰く「若くはないから祝わないでほしい」と事前に聞いていたのだが、当日はちゃっかりワインをもらっていた(私とインド人ルームメイトがあげた)
構って欲しいタイプの「祝わないで」と本気で拒否している「祝わないで」のうち、後者だと思ったのだが、私もまだまだ修行が足りない。
彼は両腕にタトゥーが二個ずつ入っている。
その日の夜は、ホステルで働くメンバーやお客さん8名と地下のバーで飲み交わした。
その際、彼のタトゥーの話になった。
これは「他人を思いやろうって言う意味で、こっちは友達が彫師になったから記念に彫ってもらったの。デザインがいまいちで気に入ってないけどね。」
これにオーナー夫婦の妻(オランダ人)が答えた。
「そんなことないよ!私もタトゥー入れるか迷ってるんだよね〜」
迷っていると言いながら彼女は入れるつもりのタトゥーのデザインを見せてくれた。
「旦那との思い出の人形なの!」
これにナイジェリア人が答えた。
「もうあとは日にちを決めるだけじゃん!」
ところでナイジェリアの彼は、タトゥーを入れない主義だそうだ。
ピアスも開いていないので、その点では私と同じということになる。
「りんちゃんもタトゥーないでしょ!?」
「ないね。だって入れたら最後、温泉とかビーチに行けなくなっちゃうよ。私温泉好きだからさ」
「ほらね!日本ではタトゥーが入ってる人はヤクザだから入れてくれないんだよね?」
このナイジェリア人、めちゃくちゃ詳しいな、と思いながら事実そうなので首を縦に振る。
「タトゥーっていくらくらいするの?」
私は疑問を口にした。
コロンビア人のCちゃんが答えてくれた。
「安くはないけど場所によって全然違う。私は初任給で彫ったよ!」
なんと、初任給でタトゥー。
日本であれば親が泣く。
もしくは親に一生隠して生きなければいけなくなりそうだが、明るいCちゃんのことだから「見て!」と家族に自慢したに違いない。
それから話題は彫りたいデザインについてになった。
私は会話を上の空で聞いていた。
死ぬまで体に背負えるデザインや言葉ってなんだろう。
その時の状況を表すことならできるが(ライオンが好き!など)
生涯をかけて体と共に生きる言葉ってあるだろうか。
一生大事に想える言葉ってあるだろうか。
一生好きなデザインって、あるだろうか。
見つかったら、心だけでなくこっそり体に忍ばせることもいいかもしれない。