オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【画面から飛び出してきたサタン】
私が住み込みで働いているホステルには、私を含めて6名の住み込み仲間がいる。
その中で、私のすぐ後に入ってきたスペイン人のAちゃんは19歳と、誰よりも若い。
彼女は清掃のシフト中の5時間、ずっと彼氏とビデオチャットしている。
仲間内では「彼氏は無職なのでは?」ともっぱら話題だが、どうやら学生で夏休みらしい。
最近気づいた彼女の鼻の効くところは、フロント付近では音声通話をしていない点である。
つまり、怒られそうな場所では話さないのだ。
それが発覚したのは昨日の昼飯の時だ。
マネージャー「Aちゃんって、彼氏いたの?知らなかったわ」
こちとら勤務初日から彼女と彼氏はセットである。
なんなら上半身裸の彼氏を何回も目撃している。名前も聞いたけど興味がないので忘れてしまった。
てっきりマネージャーも知っているものと思っていたので、彼女の巧妙な作戦に驚きのあまり言葉を失っていると、
マネージャー「さっき彼氏が来たわ」
ついにスマホから彼氏が飛び出してきてしまったのだ。
きっとAちゃんは「仕事つらい、つまんない、会いたい。」的なことを毎日話していたのであろう。
勤務後もホステルの庭でずっとビデオチャットをしていたのだから。
仲間のフランス人いわく「何をそんなに話すことがあるのか理解できない」だが、激しく同意する。
見かねた彼氏がホステルに来てしまったのだ。
その日は私と清掃のシフトに入っていたAちゃんであるが、早速仕事が遅くなった。
いつもビデオチャットをしながら仕事しているので遅いのに、さらに遅くなってしまったのだ。
一部屋掃除機をかけるのに、20分以上かかっていた。
日本のホテルなら厳重注意ものである。
おまけにあと1時間で仕事が終わるというときに、待ちきれなかったのか彼氏が清掃中の部屋の入り口に来てしまった。
走って迎えに行くAちゃん。行かなくていい。
なんかちゅっちゅちゅっちゅ聞こえるぞ。
「お〜〜〜い!」
君達の背後にあるバケツに用があったので声をかけると、そのまま二人で庭のベンチに逃げてしまった。
まるで今日が地球最後の日であるかのように、二人で寄り添っている。
今日彼女のやった仕事:2部屋のベッドメイク、スタッフ用トイレ・シャワールームの清掃、2部屋のゴミ箱交換、食器洗い
今日私のやった仕事:3つのシャワールーム、5つのトイレ清掃、3部屋の水回り清掃、6部屋のゴミ箱交換、食器洗い
今私のやりたいこと:Aちゃんにビンタ
どうか彼氏に説得されて、早く辞めてくれないかなぁと切に願う。