オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【趣味は言語です】
オランダの住宅街にて、駅近が好きなのになぁと思いながら毎晩真っ暗な道を自転車で帰宅している。
私は「アホと思われる質問をしたくない」というクソみそプライドの高い人間だ。
できれば「いい質問ですね」と言われたい。
これは、中学生の頃から続いているラジオを聴くと言う習慣が多大に影響を及ぼしている。
送ったそのメールが採用に至ったことで、初めのうちは飛び上がるほど喜んだものだ。
しかし、だんだんそれが目的ではなくなってきた。
自分の投稿がきっかけでその日のゲストとの会話が盛り上がったり、今まで聞いたこともなかったようなパーソナリティの情報が引き出せたり、そういうことが一番嬉しいと感じるようになってきた。
私にとって質問とは、自分の疑問を解消するものであり、会話のスパイスでもある。
しかし、多少アホに思われてもどうしても聞きたいことが最近出てきた。
オランダ語のレッスンについてである。
私の先生は10カ国語以上喋れる、”言語変態”だ。
その先生が第二なのか第三なのか最早分からないが、日本語を忘れることはない。
どうやって長期的に記憶しているのだろうと以前から気になっていたのだ。
ぽろぽろ落ちていく記憶。
何回も間違える単語。
だんだん自分に腹が立ってきたのだ。
先生もまた、こういったことを聞かれ慣れているであろうと考えていた。
「ああ、はいはいその手の質問をしてくるタイプの人ね」
と、彼の頭の中で”やる気のない生徒”に分類されるのも嫌だった。
しかし、背に腹はかえられない状況になってきた。
あまりに同じ単語を間違えるのでイライラで切腹しそうになっていたのだ。
「先生はどうやって単語をたくさん覚えていますか?」
たったこの一文を聞くに至るまで、2週間はかかった。
「んー、アプリとフラッシュカードだよ」
意外と普通だった。
言語変態だから、何か知られざる効率的な覚え方があるに違いない。
もしくは魔法陣を描いて脳みそに単語をダイレクトインしているに違いない。
それにあやかろうと勝手に予想していた。
フラッシュカードはこんな感じ、と先生は自分の机を触ると、即座に画面越しの私に500枚はあろうかというカードたちを見せてくれた。
パソコンからすぐ手に取れる位置に置いてあるのか。
紙製なのでもちろん手書きだ。
「あとは記憶のアプリに入れてあるよ、そっちの方が間違えた単語を優先的に出してくれるからおすすめかな」
そのアプリに入力するのも、結局自分だ。
先生の地道な努力に、今までどれだけの時間を費やしてきたのだろうと恐ろしくなった。
「趣味は言語」
そう言いはる先生のように、私も「趣味は単語の暗記」と言っても恥ずかしくない量を覚えたい。