オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【ごぶさた】
オランダの都市部にて、同じ人間なのかと思った出来事を綴りたい。
先日、友人に夕飯をご馳走になった。
夕飯をメインに家に訪れたわけではないので、適当でいいよと言っていたら本当に適当なものが出てきてたまげてしまった話だ。
それは、ピタパンに炒めた肉を入れたものだ。
玉ねぎ?
ない
トマト?
ない
レタス?
ない
パプリカ?
ない
牛肉オンリーのシンプルな一品だった。
完成品のぱっと見は肉まんだった。
私は作ってもらっておいてなんだが「え、夕飯これだけ?」と引いてしまった。
私は自分と違う文化を見るとすぐに引く。
引き潮のまま帰ってこない。
せめてピタパンは好きな味付けでと言わんばかりにケチャップ、マヨネーズ、サルサソースを出してくれた。
マヨネーズ党の私はしこたまマヨネーズをピタパンの内側に塗った。
マヨネーズで満腹になろうとしていた。
私はつい「玉ねぎがあったらもっといいかも」と大口を叩いてしまった。
「じゃ、今度は玉ねぎ入れよう!」
心の広い友人は、愛想よく返してくれた。
野菜のあるなしで不貞腐れていた自分の器の小ささを思い知った。
料理の献立は育ってきた環境に大きく左右されるだろう。
私の母はあまり料理が好きでなかった。
頻出のレシピを紹介しよう。
ご飯、麻婆豆腐。
ご飯、じゃがいもと卵の炒め物。
ご飯、551の餃子としゅうまい。
一行がその日の夕飯だ。
とにかく、一品あれば満足でしょうというメニューだった。
そして後から気づいたことだが、母は少食なのでよく夕飯のおかずが足りていなかった。
父の分を弟と私でたいらげてしてしまうことがよくあった。
その一品も、調味料の会社が作っている袋入りの調味料の裏面に「あとの材料はこれだけ!」と書かれたものが多かった。
私は裏面に指示がないと料理はできないものだと思い込んでいた。
手慣れた感じで何も見ずに肉を炒めて適度にスパイスを振る、なんてやったことがない。
必ず分量を書いていてほしい。
どこの誰が書いたレシピか知らないが、とにかくインターネットの世界に落ちているどんなレシピでもいいから私に指示を与えてほしい。
どうやら料理はそうではないらしい。
もっと適当でいいらしい。
それでも私は、分量きっちりにカップ麺を茹で続けるのだろう。