【オランダの病院で働いている 7】
オランダのたった三階建てなのに嘘みたいに広い病院で働く日記。
8時間労働の中で休憩が4回ある。
休憩時間は10分〜30分と時間帯によってまちまちで、長い時は45分もらえることもある。
全ては我々の大動脈であるギガンティック食洗機の機嫌によるので、機嫌が悪い時は休憩時間も少し短くなる。
今日はオランダ人のヒューゴと、モロッコ人のヤミナ、そして聞いてもどこ出身か教えてくれないクリフテンとテーブルを囲んでいた。
クリフテンは見た目が25歳くらいの青年なのだが、いつも若く見られるらしい。実際は33歳の私より年上だと言う。
え、お前33歳なん?
そんなことはどうでもいいじゃないか。
しかしどこからどう見ても20代なので、私をからかっているのかもしれない。
真偽の程は分かりかねる、なんせ出身地も濁すのだから。
「言っても分からないよ」
カリブ海の島出身だけど、どの島かはまだ教えてもらっていない。
ひょっとしたら野球が盛んな島出身で、WBCの話に花が咲くかもしれないのに。
そんなクリフテンが今朝は紅茶にスティックシュガーを5本入れようとしていた。
「クリフテン、その紅茶渋いんならこっちの方が甘いよ」
ヤミナが今自分が飲んでいるティーパックを指差した。食堂に置いてある無料のものである。もっともなアドバイスだ。
「それあんま美味しくないやん」
クリフテンは体型がブラックマヨネーズの小杉さんに似ているので私の中では関西弁だ。
人が目の前で飲んでいるものを堂々と「美味しくない」と評価するところがクリフテンの憎めないところだ。無神経ともいう。
「5本・・・」
私は目をまん丸にしながらスティックシュガーの川を眺めた。
「何?昨日お前もあっまいあまいスイーツ食ってたやん」
「それはスイーツじゃん。あなたのはコップ一杯の紅茶じゃん」
「一緒や」
一緒ちゃうわ。
夫婦漫才が始まってしまうので眉間に皺を寄せるだけにしておいた。
その後もクリフテンはロールパン一個を半分にスライスして、携帯用マヨネーズの袋をビギナーなら一本で足りるところを二本丸々使い切っていた。
空になったマヨネーズの袋を見つめるヒューゴの表情は「よくそんなに塗れるな」と呆れ返っていた。
口に出さないけれど顔には出ているところがヒューゴの伸び代、いやつっこみどころのあるいいところだ。
クリフテンの入れすぎ塗りすぎ問題がまたあれば報告したい。