オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【愛しき同居人】
オランダの都市部にて、窓からたまに見える短足胴長の猫を生き甲斐にしながら暮らしている。
なんだか落ち着くルームメイトと暮らしているのだが、先日その理由が判明した。
私の母に似ているのだ。
似ているポイントはたった一点なのだが、その一点が私の母の最大のポンコツポイントだった。
”物をどこに置いたか忘れる”
加齢によるものではない、彼女は私が小学生の頃からこう口にしていた。
「コーヒーどこだっけ」
これに対する回答は三つある。
「ピアノの上だよ」
「鏡台の前だよ」
「淹れたまま放置してあるよ」
ごく稀に洗面台の正面についた、歯磨き粉一時置き場にも置いてあるので気が抜けないクイズだ。
もう一つよく出されるクイズがある。
「メガネどこだっけ」
残念ながら一番簡単な回答、
「今かけてるよ」
これが正解だったことはない。
大抵、せんべい布団の上に転がっているか、これもまたピアノの上に置いてあるのだ。
そう、母はピアノを万物の一時置き場にしている。
そしてそれを、意識していない。
現在ルームメイトのベトナムガールもそうなのだ。
ある日、私がシャワーを浴びようと扉を開けた時にシャンプーなどが置いてある場所に、スマホが寝かせてあった。
防水ケースにも入らずスマホ氏、すっぽんぽんである。
「えええ!」
びっくりしたときに真っ先に出てくるのはまだ日本語だ。
すぐさまシャワールームの向かいの彼女の部屋をノックした。
「スマホ忘れてるよ」
部屋から出てきた彼女は
「あ!今取ろうと思ってたの!」
彼女は30分以上前にシャワーを終えていたはずだ。
恥ずかしくないぞ、何も恥ずかしくない。
むしろ私の部屋を突然ノックして「私のスマホどこだっけ」とクイズを出されても長年の知恵で「ピアノの上!」と答えられる。
残念ながらここにピアノはないが。
ちなみに彼女のメガネはこの1ヶ月でキッチンのテーブル、シャワールームで見つけた。
私は一人で着々とクイズの正解率を上げている。