オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【点線をなぞる】
オランダの都心にて、日本にいた頃は半年に一回あるかないかの”家から一歩も出ない日”が週一に増えた日々を送っている。
ふと気づいたことがある。
私の母親は30歳でフィリピンに移住した。
私も何の偶然か、同じ30歳でオランダに来た。
その時母は私と私の弟を連れていたので全く状況が異なるが、年齢が同じことに妙な親近感を覚えた。
私はどうやら30歳で冒険したくなる家庭に生まれたらしい。
これに気付いたのは夜、ぼーっとサブスクリプションで映画を観ていた時なのだが、映画の内容が好みでなかった証拠だろう。
最近、母とのもう一つの共通点に気づいてしまった。
私はどうにかしがみついてここに長いこと住みたいと考えているので、化粧品なども一から開拓している。
そして夜のスキンケアの際、顔のパックは欠かせないと考えている。
ドラッグストアにてパックを見つけては陳列の端から端まで一枚ずつ買い、試す。
HEMAにてパックを見つけては陳列の端から端まで・・・買うと10枚以上になるので少し省いて買い、試す。
この”パック”に信頼を置いている度合いが母を彷彿とさせたのだ。
幼少の頃、好きなテレビ番組を見終えて、ふとテレビの後ろにある母の部屋を覗くとそこに母の姿はなかった。
その代わり、鏡台の前に腰掛けるまっしろいお化けがいたのだ。
お化けは母の水色のパジャマを着ており、目と口だけがぽっかりと黒かった。
話しかけると「ふふふふふ、怖いやろ」と笑っていた。
おそらく母は、この曜日は必ずパックをする、と習慣にしていたのだろう。
まっしろいお化けは定期的に母の部屋に訪れては、じっと鏡台の前に座っていた。
顔の手入れはそういうふうにするものだと刷り込みがされたのだろう、私もうっかりパック漬けの日々を送っている。
ドラッグ漬けよりは幾分ましだが、美容の沼は底なしなので母のように週5日ジムに通い出したりしないことを祈るしかできない。