オランダワーキングホリデー情報局

オランダでのワーキングホリデー(2021-2022)の情報基地。毎年200人行っているはずなのに全員地球からログアウトしたのか、情報が少ないので立ち上げました。

【大きめの歯車】

オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。

 

 

 

【ホステルで働く辛い場面】

 

オランダのまあまあ新聞に載るホステルにて住み込みで働いている。

 

先週、同じく住み込みで働いているインド人が故郷に帰った。

 

彼にはこの表現がしっくりこない。

 

空港に行くときも「なんだか次の旅先に行く気持ちだわ」と話していた。

 

彼は2年前にインドを出て、ノマドしながらヨーロッパを周遊、スペインやドイツにも滞在してここオランダには五か月滞在していた。

 

 

 

「次の旅先に行く」

 

 

その通りだと思ったのは、国に帰る人の特徴である

 

・先に荷物を実家に送る

 

・それでも荷物がさばけなくて預入荷物はマックスの個数ある

 

・更に荷物があって持ち込み手荷物も重量ギリギリ

 

彼の荷物はそうではなかったのだ。

 

スーツケース一個だけを預けていた。

 

 

 

さて、そのスーツケースが問題だったのだが。

 

 

 

 

前日の夜、本来ならばダブルワークで他のホテルにてシフトが入っていたのだが代わってもらい(当たり前だろ)

 

夜8時から荷造りを始めていた。

 

出発は明朝9時だ。

 

荷造りってもっと前からするよな?と驚いたのだが、

 

彼は服を畳まず、液体を袋に入れず、スーツケースに適当にぶち込んでいった。

 

いや、そうするだろうなと知っていた。

 

三か月一緒に寝泊まりしていたのだ、彼が一週間に一回洗濯することも、洗濯した後畳まずに引き出しにぎゅうぎゅうに押し込むことも知っていた。

 

スーツケースだけ綺麗に整頓する訳がなかったのだ。

 

それでも私は「もっと体積を小さくすればスペースができる」というアドバイスをしたくてたまらなくなった。

 

 

近藤麻理恵(こんまり)信者だからだ。

 

 

私「あの、スーツケース整えようか?その方がスペース出来ると思うよ」

 

 

インド人「最初はそれやってたの!17時くらいね!

でもこの3時間で諦めた!」

 

3時間も格闘していたのか。

 

大変失礼致しました。

 

捨てる捨てないの選択が難しいのだろう。スーツケースから入れたり戻したりを繰り返していた。

 

適宜不要と判断したものは「いる?」と部屋にいる私とフランス人に尋ねていた。

 

いらん。

 

 

 

最終的に私は彼から、

 

ものさし、ペン10本、ホワイトボードマーカー2本、マグカップ、靴磨き、ナイキのスニーカー、ベンチコートを頂いた。

 

明らかにもらいすぎである。

 

半分以上後でこっそり捨てたが(どう考えてもものさしは要らない)、ベンチコートはベージュと合わせやすい色で重宝している。

 

 

彼はホステルの貸し出し備品の体重計を借りてきて、体重計にどしんとスーツケースを載せ、爆速で起き上がらせて「25キロだった!」などと計量していた。

 

 

その計り方では空港で無意味になろうと思っていたのだが、意外や意外チェックインカウンターでも同じ重さだった。

 

 

さて、チェックインカウンターに付いていった理由はこれだ。

 

 

 

搭乗できるか分からない。

 

 

PCR陰性は済ませたが、EU圏内で流通している"コロナチェックアプリ"に彼は自身の打ったワクチンの情報が入っていなかったのだ。

 

EU市民でない、かつ自国で打っていないから云々理由はよく分からない。

 

 

ただし、紙の証明書はある。

 

搭乗の二日前に「あなたは帰国しても入国できない可能性がある」とオランダ政府から達しがあったのだ。

 

コピーした証明書を握りしめる彼を見ながら、散々聞いた政府への文句を思いだしていた。

 

 

乗れても嬉しい、乗れなくても嬉しい。

 

 

私は見送りたくなかった。

 

うんざりした表情で「乗れないかも」と告げられた時、100パーセントのうち1パーセントだけでも嬉しかったことは口が裂けても言えなかった。

 

色んなことを教えてもらった。

 

仕事が多すぎて潰れそうなとき、

 

"俺たちはボランティアなんだから気負いすぎないように""君はサボるのが下手すぎる"と、響く言葉をくれたのも彼だった。

 

 

サボるのが上手くなったのは彼のおかげだ。

 

 

数分後、彼は無事に搭乗券をもらった。

 

オーバーしていた持ち込み手荷物の重量チェックもなかった。めちゃくちゃラッキーだ。

 

 

搭乗券を手渡されたとき、特に悲しい気持ちにはならなかった、泣く準備は万端だったのに。

 

ただ、叫びたかった。

 

やったぜ!!

 

 

「やった!!!!!」

 

二人は同じ気持ちだったらしい。

 

ホステルで集合写真を撮った時よりも、弾けるような笑顔だった。

 

 

行ってらっしゃい。