オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【やる気スイッチ喪失】
オランダのホステルで住み込みで働いている三十路がお送りする。
私が中学生の頃だったか、進学塾のコマーシャルで流行った文句があった。
「やる気スイッチ、君のはどこにあるんだろう?」
私のものはドミトリーにない、そう言い切れる。
朝、水を温めて部屋全体をあったかくするタイプの暖房が全く効いていないので室内はひんやりとしている。
そもそも暖房の前には誰の二段ベッドもなく、鎮座しているのはタンスだ。
夏から思っていた。
何故、暖房の前にタンスを置いたのだろう?
嫌がらせだろうか?
それもここに住むとわかった。
嫌がらせではなく、タンスを設置したのが夏で誰も気に留めていなかったのだ。
頭から花が生えていそうなオーナーのことだ。そんなこと気にしなかったに違いない。
3段x4列とまあまあ広い幅のタンスの表面だけがぬくぬくしている。
私はタンスの中にキッチンに置いて取られたくない醤油とか米を置いているのだが、今のところ腐っていないのでそのまま置き続ける予定だ。
キッチンに置いていると、無断で醤油を借りていく不束者がいるのだ。
不束者の話はさておき、ドミトリーは半地下にあるので薄暗い。
今、半地下と聞いてある映画を思い浮かべた人がいると思うが、まさにその映画だ。
パラサイト。
薄暗い半地下で6名の宿代を払いたくない若者(とたまに40代)が働いている。
救いは窓が3つあることだ。
余談だが、窓をオランダ語では"ramen"と言う。
発音はラームンなので残念ながら異なる。
誰が残念なんだろう、まあいいか。
私はこのドミトリーにいるとベッドに寝転がって一歩も動きたくなくなる。
朝はできるだけ寝ていたいし、夜帰ってきてスマホをいじろうもんならそのまま横になって寝たい。
つまり脳はここを寝室と認識している。
二段ベッドをあと二つ三つ置けそうな広さだが、机がない。
そういうところが、ここは作業部屋ではなく寝室と思わせるのだろう。
言っておくが私は日本では仕事がなくても8-9時には起床していた。
負け惜しみと言い訳にしか聞こえないが実際にそうなのだ。
朝方だった私が一瞬で夜型になったのは半地下が原因と考えている。
人生の澱の部分、半地下。太陽を欲している。
無理してでも地上に出たい。
そうして私は来月このホステルの住み込みを辞めることにしたのだ。