オランダワーキングホリデー情報局

オランダワーキングホリデーの情報基地。毎年200人行っているはずなのに全員地球からログアウトしたのか、情報が少ないので立ち上げました。最近はオランダの病院で働くブログ。

【最悪の初対面】

オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。

 

 

【君の親を殺したっけ?】

 

オランダの都市部にて、そこで仕事が見つからず隣の都市部まで通勤している。

 

私が今働いている郵便局では、フロア全体に派遣会社が入っている。

 

私もその派遣会社の一員だ。

 

クリスマス時期限定の仕事なので、派遣が主力となって億千万のカード達と戦って、失礼捌いている。

 

その日、あると思っていた電車が工事でキャンセルされており、1時間遅れて出勤していった。

 

こそこそとフロアに到着し、マシーンの間を縫うように歩いてフロアの真ん中にある事務所に到着した。

 

扉を開けると、普段は「はい!時間あるならスタンプ打って!」など皆の尻を叩く、カリカリフロアマネージャーが朝食を食べていた。

 

あら、朝食の時にごめんなさい、と思うと同時に「すいません遅れました!」と口にした。

 

謝るのは早いに越した事がない。

 

彼女は口をもぐもぐさせながら「いいのいいの〜」と口にした。

 

よかった、怒っていない。

 

ほっと胸を撫で下ろすと、後ろから「2回目だぞ!」と男性の声がした。

 

振り返ると、グレーのスーツがビシッと決まった50代の男性が立っていた。

 

 

彼と会うのは2回目だ。

 

初対面の会話はこうだった。

 

作業台で小さいカードたちを機械に黙々と通していたときのことだった。

 

彼は、私の機械の前にぬっと音もなく立ちはだかった。

 

いや実際には音がしたのかもしれないが、機械の音がうるさくて聞こえなかった。

 

「何でそのジャージを着てるの?」

 

「何でって言われても・・・寒いんで」

 

と答えてすぐに気づいた。

 

私をじっと見つめるその真っ青な瞳は怒りの炎に燃えていた。

 

やべぇ、敵チーム(フェイエノールト)のサポーターだ。

 

私のジャージはアヤックスの公式グッズだ。

 

そういえばここは、野球で例えるならば阪神タイガースの本拠地だ。

 

しかもここは大阪ではない、甲子園により近い尼崎だ。

 

濃い阪神ファンのいる地域である。

 

私はそこで、巨人のユニフォームを身に纏っている。

 

死に値する。

 

街を歩いていて、後ろからこん棒で殴られても「まぁそれは君が悪いね」と病院で言われかねない。

 

しかもその日は、阪神巨人の試合の日だったのだ。

 

私たち二人が会話しているのを見て、サッカー好きなのかわらわらと2、3人集まって来た。

 

スーツの男性は、派遣チームのマネージャーに「ちゃんと言っとかないと!そのジャージはここでは違法だよって」とこぼしていた。

 

違法って聞こえたぞ。

 

むちゃくちゃ正規のルートで買ったんだけどな。

 

そういえば彼は30人以上働いている派遣の中からめざとく私を見つけたのだ。

 

その執念がおかしかった。

 

「ほら、お前の仲間いたぞ!」

 

彼は遠くからきらきら金髪の20代男性を呼びつけてくれた。

 

「今日は勝とうね!」

 

自分で呼びつけておいて、彼はきらきら金髪の横でムッとしていたのがおかしかった。

 

 

 

 

さて、それから2回目の対面だった。

 

私はまたしてもアヤックスのジャージを身に纏っていた。

 

彼のことはすっかり忘れていた。

 

だって、このジャージはアディダスなのでとても暖かい。

 

「ちょっと!また着てるね!?」

 

彼は手にカードをまとめるための太い輪ゴムを持っていた。

 

パチンッ

 

輪ゴムが私の足元に飛んできた。

 

50代の男性に、学校の教室の中よろしく輪ゴムを飛ばされてしまった。

 

しかも、前回はなかった武器が搭載されている。

 

3回目には本当にこん棒が登場しかねない。

 

マネージャーが笑い、私は火に油を注いだ。

 

「0点でしたね」

 

あの日、彼の好きなフェイエノールトアヤックスに負けたのだった。

 

だからゴムパッチンだったのかもしれない。

 

私はそういえば名前も知らないなと思い、彼が去った後マネージャーに聞いた。

 

「あの人誰なんですか?」

 

「あの人はここの局長。一番偉い人だね。」

 

 

フェイエノールトはなんて素晴らしいチームなのだろう。

 

長いものには積極的に巻かれていくタイプなので、

次回から何のロゴも書いていないジャージを着ていくとしよう。