オランダに住んでいる人(31歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【ここに一枚のピザがあります】
オランダの住宅街にて、猫を見かけたので「ちょっと待って!」と猛速で家に帰り再び地上に降り立ったが、そこにもう猫はいなかった日々を送っている。
先日、配達で初めてのレストランに訪れた。
街のはずれにあったが、店内もテラス席も賑わっており「こんなところにイタリア料理屋さんがあったのか」と感嘆せんばかりの穴場だった。
「外のベンチで待ってて、僕が持っていくよ」
配達がメインの収入ではなさそうだったが、一応ライダーの待機場所が作られていた。
数分後、店員さんがベンチまでピザを持ってきてくれた。
大都会ユトレヒトでは「配達員さ〜ん!」とでかい声で犬のように店内まで呼びつけられることも多かったのでありがたいサービスだ。
ところで私は配達におけるピザが大好きだ。
早い。
とにかく焼き上がりが早く、待ち時間が少ない故にストレスも少ないのだ。
そのピザはオランダ人の好きな”SサイズなのにLサイズくらいある巨大ピザ(当社比)”ではなく、日本でもSサイズだった。
軽い。
ディナータイムは家族や二人分のオーダーが多いので、ラッキーだなと思いながらバッグに詰めた。
さて、この軽いピザを頼んだお客さんは随分街中に住んでいるらしい。
これもまた、どうせ次のオーダーが入れば、街中のお店に向かう必要があるのでラッキーだと喜んだ。
着いた先は、ロビーのオートロックがタッチパネル式だった。
相当新しい建物らしい。
ずらりと両脇に並んだ郵便受けで、一応お客さんの名前を先に確認した。
このマンションで間違いない。
新しいマンションだが、個人情報保護の観点はオランダにないらしいので、郵便受けにフルネームの記載があった。
扉を開けてもらうと、エレベーターが3基もスタンバイしていた。
どうやらエレベーターごとに、止まるフロアが分かれている模様だ。
まるでグランフロント大阪のオフィスだ。
昼飯時になかなか掴まらないで有名なエレベーターを思い出しつつ、目的のフロアに向かった。
エレベーターと部屋の前にまた一枚扉があるマンションだった。
この手のマンションは30年の年の功で分かる、かなり高級だ。
昔、代々木の占い師さんの事務所に訪れた時も、部屋の手前にもオートロックが備え付けてあって”何回、顔確認されなあかんねん”とイライラさせられたものだ。
ふかふかのフロアを土のついたニューバランスで進んだ。
出てきたお客さんは、お肌がぷるぷるの青年だった。
10代と言われても頷ける。
貴様、どのような経緯でこの高級マンションを手に入れた!
という表情をしてしまったか分からないが、彼はピザを受け取ると即座に中に引っ込んだ。
後で確認すると、若い人にもらったことのない額のチップをくれていた。
チップは主にご高齢の方に頂けることが多い。
この制度に馴染みがあるからだろう。
ケチじゃない金持ちは嫌いじゃない、たまに恩恵に授かれるので好きだ。
金持ち、金を使いまくるから金持ち論を思い出す夜だった。