オランダに住んでいる人(31歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【信じられないMacBook】
オランダの片隅にて、まだゴミ回収のシステム(ゴミ箱ごと持ち上げ、底を開けて収集車に落とし入れる)に納得いっていない日々を送っている。
先日、イギリスに行ってきた。
その際格安航空を利用したのだが、今回はその道中に起きた信じられない出来事を書こう。
彼女は通路側の席だった。
先に座っていた私の隣に腰掛ける際、「すいません」と声をかけてくれた。
英語圏の人は「こんにちは」「やぁ」と始めることが多いので、謝りから入るのは珍しかった。
後に起こる出来事について先に謝っていたのだと、この時の私は知る由もなかった。
彼女は大きなバックパックから15インチはあろうかという特大サイズのMacBookを取り出した。
機内で作業をするのだろう。
座るや否やラップトップを開き、ログイン作業をしていた。
時間はあっという間に経過し、離陸モードになってもまだパチパチとキーボードを打っていた。
は?
三回もの客室乗務員のチェックをスルーし、彼女は加速する飛行機の中でキーノートを作り続けていた。
派手な彩色からして、仕事用ではなさそうだ。
ページ数も20枚以上確認できた。
企業のプレゼンであれば、8枚目あたりで「これ後何枚あります?」と聞きたくなる量だ。
ちょうど夏休みの期間だったので、大学から出た課題に追われている学生といったところだろう。
離陸は一番墜落の可能性がある瞬間だ。
メーデー!民(飛行機事故のドキュメンタリー視聴者のこと)である私は「ガキがふざけてんじゃねぇぞ」と鬼の形相でずっと画面を見つめていた。
命より大事なプレゼンなんてないだろう。
ましてや、飛んでいったラップトップは誰の頭に直撃するか定かではないのだ。
客室乗務員がベルトを確認しに三回も来たのに、ラップトップに気づかないとは何事か。
私は「素敵な音楽をありがとう(キーボードを叩く音がうるせぇよ)」と言いたくなっったが、黙ってムービーを撮ることにした。
席番号、搭乗機、は分かる。
着席の際ちらりと見えたパスポートでイギリス国籍であることも確認済みだ。
私は3年間のホテルのフロント業務にて、大体のパスポートのデザインを把握している。
裏表紙だけでも、イギリスとオランダの違いは分かる。
あとは彼女がトイレに席を立ったときに手が滑って、パスポートの顔写真でも記録に残そうと画策していたが、彼女は一度も席をたたなかった。
それもそうだ、なにせ離陸の一瞬だけラップトップを閉じ(その時点で違反だが)期待が安定するとまた颯爽をラップトップを開いたからだ。
こちらの最悪の予想通り、着陸時まで音楽は奏でられた。
すると、着陸の際は客室乗務員に見つかった。
「ラップトップは閉じてください」
「うーわ」
大学生のリアクションは「うーわ」だった。
着席の際のしおらしい「すいません」は消え失せていた。
格安航空は好きだが、客層は嫌いかもしれないと思った出来事だった。