オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【緊急事態だった】
オランダの都会中の都会で、皆に言いたくなるくらい素敵な部屋に住んでいるので、得意の卑屈を発揮できなくて困る日々を送っている。
私がこの部屋で危惧していたのは、騒音だ。
駅が目の前なので夜間や早朝はどうなることかと思っていたが、そもそもオランダの鉄道は”まもなく3番線を電車が通過します”だとか、”出町柳までの各駅に停まります”など、情報を駅のアナウンスで教えてくれないので駅舎自体が静かだった。
そんなある日、”プープー”という音で目が覚めた。
起きたのは7時台。
外は日本の丑三つ時のように真っ暗だった。
音の出どころが分からなかったが、定期的に聞こえるということは何らかの異常を知らせているようだ。
火事かな、火事ならもっとうるさいか。
寝ぼけた頭で廊下に続く扉を見てみると、白い扉が真っ赤に見えた。
は!?
しかもその赤色は、一定間隔で点滅している。
何何何火災報知器が点滅している!?
それが窓から差し込んだ車のテールランプだと気づくまで脳内は”火事じゃん火事じゃん”と騒いでいた。
しかし寝ぼけているので、ベッドに座ったまま騒いでいた。
カーテンを覗くと、目の前の道路に大きなトラックが駐車しようとしていた。
小刻みに、何度も切り返していた。
駐車が上手く行かないので、私の部屋中にバックする音が聞こえていたようだ。
乗用車しか停められなさそうなスペースに、如何にその巨体を停めるのかと覗いていたが、ついに諦めたのか駅の方に消えていった。
ああ、よかった。
まだプープー聞こえている気がするが、あまりにも眠たかったためにベッドのどこかに転がっているイヤーポッズは放置して寝た。
数分後。
プープープープープープープープープープー
息の根を止める!
怒りを保ったままでいられるので、このまま窓から飛び出そうと思ったが、近づくだけで冷気が伝わってきたので止めておいた。
確認すると、運転席が先ほどと反対側にあった。
なるほど、逆方向なら停められると踏んだらしい。
その予想は大当たりで、今度はすんなりプープーが消えた。
つまり、停車出来た。
おめでとう。
用心深いので、毛布の中に埋もれたイヤーポッズを探し当ててから眠りについた。
私はその日、朝10時近くまで寝てしまった。