オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【育ってきたセロリ】
オランダの都市部での居候を終えて、なんやかんやあって新たに居候を始めた世話になりっぱなしの人間だ。
先日、自分史上最悪に居心地の良くない民泊を無事に脱出した。
今回は脱出に至った経緯を書こう。
脱出できたのはまずもって、彼女のおかげだ。
インターネットを通じて知り合った日本の大学に通う彼女は、私と同じく一年オランダに滞在する予定だそうだ。
良い大学の使い方をしている。
四年でさっさと卒業してしまった私は、どこか海外に住むべきだったと感じているからだ。
「うち、今だけ一部屋空いてるよ」
初めて遊んだ日の別れ際にこう言われた。
「いいね〜。」
そんな、誰もがしそうな返事をしたと思う。
その二日後、私は彼女の家に世話になる決意をしたのだった。
有言実行。
いや、言っていないのでテロ行為だ。
居候テロ。
新たな犯罪を作ってしまった。
そんな私のテロに対処してくれて本当に素晴らしい子だった。
私が感動したのは懐の深さだけではない。
家が全体が綺麗なのだ。
あの思い出したくもない前回の家はこうだった。
何かを使うたびに掃除しなくてはならない。
オーナーも自分が作ったルールなので、毎回シャワーを浴びるたびに自らも掃除していた。
その掃除の音が何だか大きく聞こえた。
イライラしながら掃除しているようだった。
「客がいなくなっちまえば、こんな習慣やらなくていいのに」
浴室から湯気とともに本音が漏れ聞こえてきそうだった。
しかし、彼女の家では違った。
家具や家電は全て彼女が揃えたわけではないのだが、揃えた人の趣味や好きなものが至る所に散りばめられていた。
誰かの"好き"が詰まった空間、できるだけ綺麗に使いたい。
姿は見えなくても誰かが居心地良く作ろうと頑張った家は、来た人の心も暖かくしてくれる。
そこにルールはなくとも、私は綺麗に使いたい気持ちが溢れてきた。
掃除なんて、その気持ち一つで十分だったのだ。
キッチンも綺麗に保たれていたので、ついついキッチンに立ちたくなる家だったが、思い返せば私が作ったものはクロケット、ナゲット、春巻きと全部揚げ物だった。
こだわりで溢れていなくてもいいけれど、何故か綺麗に使いたくなる家に、いつかは住みたい。
できればオランダで。