【オランダの病院で働く日記 75】
空き時間にとりとめもない話をするのが職場に来るモチベーションとなっている。
その日はヒューゴから急にクイズを出された。
「オランダの州って全部言える?」
あたりめーだろ。
私が何年オランダが好きでここに住むことを待ち望んでいたかこのクソガキは分かっていないらしい。
熱っぽく喋れば喋るほど人は離れていくものなのであまり人に話したことがないことが原因かもしれない。
よし、このクイズに全問正解することで私のオランダへの愛を証明しようではないか。
「フリースラント、フローニンゲン、ユトレヒト、北ホラント、南ホラントもあったっけ?」
「あるよ」
「北ブラバント、リンブルフ。因みに南ブラバントはベルギーだからね」
「うん、あってるよ」
「あと私が毎週通ってるナイメーヘンのある州」
「なんでしょう〜?」
「ナイメーヘン」
「それは街の名前」
「畜生。あーんーあーへッ ヘルダーラント!
よっしゃ出てきた出てきた。
あと2つくらい?」
「あと3つある」
「3つかよ。ズウォレのある州なんだよ。それは分かってるんだよ。ここまで来てるんだよ」
急に口数の多くなった私を見るヒューゴの様子は、まるで高みの見物だった。
オランダ人ってだけで偉そうにしやがって。
お前東京以外の街知ってんのか?
「先週Deventerに行ったばかりなのに・・・Deventerのある州でもあるんだよ。分からん!」
諦めた。
省略したが、実際は3分くらいウンウン唸っていた。
元から知らなかったら出てくるはずもないし、日々脳細胞が死滅していっているのでそれにしては頑張った方だと褒めてほしい。出来たら愛してもほしい。
「オーファーアイセル」
奇しくも”愛せる”という地名だった。愛してくれ!
「うーん、そうだ。ああ・・・」
あんまりピンと来なかった。
そういえば博物館にそう書いてあったような気もする。
「あとは最も新しい州だよ。自分たちで埋め立てて作った州」
「あ!知ってるアルメールだよ」
「それは街の名前」
「アルメールのある州?ん〜なんだっけ。前行った時に確かに街全体が新しいなって思ったんだよね。
頭文字は?」
「F」
「えふ!?フリース・・・しか出てこないなぁ」
「フレフォラントだよ」
「知らんわ」
初耳だ。
アルメールはユトレヒトと同じで州都と州が同じ名前じゃなかったっけ?アルメール以外に全く印象がないのだ。
後もう一つを教えてもらえる前に休憩時間が終わってしまったので帰ってからもやもやを解消した。ゼーラントだった。ああ。
後日、また休憩時間が一緒だったのでヒューゴに会うなりこう言った。
「フレフォラント!私が前言えなかった地名」
「お。え?」
覚えてろよ。
「じゃあ北ホラントの州都は?」
「ふ・・・ハールレムだろ」
「マジか。正解。この間マシュー(オーストラリア人)はアムステルダムって言ってたよ」
「ひっかけ問題だよね。
次は州都を聞いてくると思って全部の州都覚えてきた」
「は!?」
「負けず嫌いなんで」
この日のクイズは一問で終了した。
なんだよ。
クイズ出題者なんだからクイズのストック常に100個くらい持っていろよ。腹立つな。
こんなブログを書いている間にも脳細胞は確実に死滅していっているので、面積でも人口でもなんでも頭に入れて次のクイズに備えたい。