オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【リンゴジュースください】
私は動物園がべらぼうに好きだ。
日本では王子動物園、京都市水族館、ニフレル 、東山動物園、上野動物園、ズーラシアの年間パスポートを持っていた。
今思うと持ち過ぎであるが、ガチ勢に比べるとそんなに多くないと当時は本気で思っていた。
さてオランダではこれまでに6つの動物園と1つのアザラシ保護センターに訪れたことがある。
飽きもせず今日もまた動物園に行っていた。
追い越した8歳くらいの少女二人組に声をかけられた。
「お姉さん!お姉さん!」
はて、私か?恐る恐る振り返るとキラキラしたおめめが4つあった。
「オランダ語は喋れます?」
「少しだけ」
「英語の方がいい?」
「英語だと楽だな」
そのあと「英語の方がいい?」と聞いた少女は「私英語喋れない!」とオランダ語で言った後ニコニコしながら去っていった。
おしまい!?
何か聞きたかったんじゃないだろうか。
テンパっている少女が可愛らしかった。
何より、私もあんな感じだなと思ってしまった。
英語で話す時にテンパってしまうのだ。
実際はそんなに気にしなくてもはっきりと大きな声で喋るだけで内容は向こうが解釈してくれるのだが。
気持ちは分かるよと思いながら背中を見送った。
その前に動物園で、オランダらしくポテトを間食しているとこんなこともあった。
「すいません、そのリンゴジュースもらえますか」
今、リンゴジュースもらえるかって聞かれたか?それとも私のオランダ語がまだまだなのか?
振り返るとそこには眼鏡をかけたくるくるパーマの小学生の少年が立っていた。
私だけではなく周囲二つのテーブルが静寂に包まれた。
リンゴジュースを持っているのは私だけだ。
そして飲みかけだ。
「ああ!いいですごめんなさい!」
誰と間違えたのだろう。
少年はダッシュで私の背後に消えていった。
「今の私に言ってましたよね?」
隣のテーブルの40代くらいの女性に確認すると「そうねぇリンゴジュースって言ってたから。でも知らん子だったわ」
もちろん私も知らん子だったので黙ってリンゴジュースを飲み干した。
なんだか変な一日だった。
しかし、おしゃべり好きとされる国民性の根っこを見た気がする。
小さい頃からよく知らない、オランダ語を話せるかも分からない人に話しかける勇気が素晴らしい。