オランダに住んでいる人(30歳・♀)が送る限りなく異世界オランダ日記。
【そもそもワクチンを打ってない】
私が住み込みで働いているホステルには、バーが併設されている。
地下に位置するバーはオーナーの手作り照明が並び、明るすぎず落ち着くおしゃれな空間だ。
そんなバーには宿泊者が主に訪れるが、信じられないことにふらっと通行人が利用することもある。
知らないホステルの知らないバーに入ってこれるなんて、食べログとGoogleマップのレビューを心の友と思っている私としては信じられない。
さて、オランダでは2021年9月25日から、認定ワクチン接種済みもしくは24時間以内の陰性証明の結果を”コロナチェック”というアプリにダウンロードしないと入店できなくなった。
早い話が、コロナチェックのQRコードがないと飲食店はテイクアウトもしくはテラス席しか利用できなくなる。
美術館や博物館などの施設は対象から除外されているので、私は心置きなく文化探訪を楽しめるのだが、問題はやはりレストランだ。
9月、太陽がかげるとコートをかき抱きたくなるくらい寒いこともある。
そんな中、テラス席。
ヨーロッパ在住2ヶ月弱。まだまだテラス席は好きになりきれない。ハエめっちゃ飛んでくるし、日差しも眩しい。ましてや秋。
寒い、ビールなんて飲もうもんならトイレとテラスを行ったり来たりすることになってしまう。
翌日のランチの際、レストランとホステルでダブルワークをしているインド人から質問があった。
「昨日からQRコードチェック始まったけど、うちではどうするの?もう一個の職場では昨日、結構QRコードを見せられたよ。」
マネージャーのオランダ人は、サンドイッチを食べながらしっかりと答えた。
「やらない」
はっきり聞こえた、やらないと。
「大体さ、バーの時間なんてただでさえクソ忙しいのになんでチェックしなきゃいけないの?どうぞどうぞ〜って言うわ!うちの近所の店ではあんまりやらないらしいよ。」
あれ、うちの近所はオランダじゃなかったっけ?
ベルギーか。ベルギーだったのかここは。
連日満室のホステル、これ以上仕事を増やされても誰もハッピーじゃないことは確かだ。
ところで私はこの会話の前日、カフェに二軒訪れていた。
一軒目は12時半、ランチタイム真っ只中。
厨房とホールの誰もが「そんなんあったっけ?」「それって明日からじゃなかったっけ?」と言い返してきそうな雰囲気だった。つまり、新しい制度に構っていられないほどクソ忙しそうだった。
二軒目では、座るや否や「QRコードはお持ちですか?」と聞かれた。
私はまるで自由席なのに指定席に座ってしまったが如くそそくさと腰を浮かせたが、こう聞くことも忘れなかった。
「テラスなら座れるでしょ?」
「座れるよ。あと10分で空くからちょっと待ってて!」
そのカフェは、入り口の扉がパッカーンと観音開きになっており、風も虫も排気ガスも入り放題だった。
まじでなんなんだ、QRコード。
日本の牛丼屋のような狭い店内でQRコードをチェックするならまだしも、おおよその飲食店がバカ広いオランダ。いるのか、そのチェックはいるのか。
QRコード制度の、行く末を見守りたい。